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日本人コーヒー生産者が語るコロンビア

松尾彩香|コロンビア

「コカ駆除新記録」偽造疑惑とコカインについて思うこと

iStock-bwilking

コロンビアと言えばコカインというイメージを持つ人は多いと思います。

コロンビアはコカインの国だから麻薬中毒者がたくさんいるんじゃないかと思う人も少なくないでしょう。しかし、私の感覚では中毒者の数はコロンビアよりもヨーロッパや北米の方が圧倒的に多いように感じるのです。

80年代に話題になった麻薬王パブロ・エスコバルのことを未だにからかわれる事にいい加減うんざりしているコロンビア人たちは意識してコカインを避けているのか、ここに住んでいてコカインを吸っている人をみたことも聞いたこともありません。

知り合ったコロンビア人に「ねぇ、日本人はコロンビアと聞いたらなにを連想する?やっぱりコカイン・・・?」と聞かれることがしょっちゅうあり、海外からネガティブなイメージを持たれていることを認識し、気にしている人が多くいるんだなと感じます。

コロンビア政府は麻薬撲滅にむけていろいろと取り組んでいますが、深く長い歴史がある上に様々な組織が絡んでいるこの問題を解決することが非常に難しいのは明らかです。

以前のブログでは、コカの駆除面積が過去最高に達したという話題を元にコカの葉の生産の裏側や政府の撲滅作戦への疑問について書きました。

駆除面積過去最高のニュースはコロンビア政府にとっては誇らしい出来事でしたが、実はこの出来事に関して偽造疑惑があるようなのです。今回はこの疑惑の内容と問題点、私が思っていることについて書いていこうと思います。

  

コカの駆除で新記録を達成したはずなのに・・・

先月のブログで、AFPBB Newsの「コカインの原料となるコカの葉の駆除が過去最高に達した」というニュースについて書きました。

しかし2月1日、その件についてコロンビアの報道機関であるNoticias Caracolが「駆除面積を偽造していた」と報道したのです。

(ニュースの原文はこちら→Denuncian falsos positivos en erradicación de cultivos ilícitos

 

関係者の告発で判明

『コロンビア国防省は2020年のコカ畑駆除数が131,000ヘクタールに達したと発表しました。』その駆除面積は過去最高で、コロンビア政府が麻薬撲滅に力の入れていることを証明するようなニュースになりました。

しかし、この駆除活動に関わっていた人や関係者の間で「政府は嘘の報告をしている」と騒がれているようなのです。

コロンビアの報道機関であるNoticias Caracolがこの件に関して調査をしたところ、8つの県で同じような告発がありました。その8県では国内全体の90%のコカが栽培されており、地元の農民や専門家たちはこのような偽造は日常茶飯事だと言います。

ある告発者によると、コカ畑の駆除は軍隊と警察、時には地元の市民で行うのですが、駆除作業をする前にコカ栽培者と取引を行うそうです。例えば栽培者が「50本なら抜いていいよ」と言ったとすると、軍隊たちは言われた通り50本だけ抜きますが「4ヘクタール駆除しました」と報告しているのだとか。栽培者はそのまま栽培を続けることができ、警察は成果として報告をあげることができるので、この取引はウィンウィンなのです。

また別の告発では、とある畑のコカを抜いた後にそのコカを隣村の牧場に植え替え、またそれを抜きとるという方法で駆除数を稼いでいるという報告まで出てきました。

 

なぜ数を偽造するのか

考えられる理由はいくつかありますが、記事内で書かれていることも含めいくつか挙げてみたいと思います。

・上層部から現実的でない目標を勝手に設定される

コロンビア政府はアメリカから麻薬撲滅作戦の為の金銭的援助を受けています。アメリカからのプレッシャーもあり、政府は目標値を高く設定するわけです。作業の大部分は手作業で行われ、安全を確保しながら作業する必要がある為スムーズに行うことは不可能なのですが、現場を知らない上層部はそう言った事情を目標に反映させません。軍という組織ですから命令に逆らうことはできず、言われたことをこなす以外選択肢はないのです。

・危険すぎる

コカの栽培地は違法武装組織が潜伏している地でもあるので、作業中に武装組織に襲撃されたり、生産者との対立があったり、時には罠として地雷が埋められていることもよくあることです。実際に2020年の駆除活動では死者が16人、怪我人が107人、暴力を伴う対立が1862件も報告されています。

・経歴に傷がつく

目標を達成できなければ評価が下がります。しかし真面目に駆除作業にあたったとしても目標値が高すぎてどちみち達成できないのですから、命がけで作業するくらいならやった事にしておく方が無難なのでしょう。

・農民が生きていけなくなる

以前のブログで紹介したように、このような地に住む農民にはコカ栽培以外に収入を得る術がありません。代替作物などの他の収入源を構築する事なく彼らから作物を奪うことは彼らの生活自体を奪う事につながります。軍隊や警察も人間ですので、そのあたりを気の毒に思ってのことかもしれません。

なお、今回の疑惑について国防省は「GPSなどを使って事実を確認する」と発表しています。

 

全部生産国のせい・・・?

コロンビアはコカイン生産大国ですが、消費大国はアメリカです。他にもイギリスやスイスなどの先進国が消費国となっており、実際にコロンビアで生産されるほとんどのコカインは海外に輸出され現地では消費されていません。

にも関わらず、トランプ前大統領はコロンビアに「農薬の空中散布しなきゃだめだよ。じゃないとコカインはなくならないよ」となんだか人ごとのような助言をしていましたし、NETFLIXのパブロ・エスコバルの生涯をベースに作られた大ヒットシリーズ「ナルコス」も、アメリカ人がコロンビアの悪人をやっつける!みたいな内容でなんだか他人事のように感じました。

コカインの問題は全てコロンビア含む生産国のせいであり、生産国が解決すべき問題なのでしょうか?

コカインがなくならないのは、先進国の人が高いお金を払ってでも欲しがるからなのではないでしょうか?

もしも私が各国の政府に物申すことができるのならば、生産国には「消費国の目なんか気にしないでコツコツと解決していきましょうよ」と言いたいですし、消費国には「コカインの使用者を減らすように対策してくださいね」と言いたいです。

 

アメリカの大統領も変わり、コロンビアでは前国防省大臣のカルロス・トルヒージョ氏が先月末にコロナウイルスで亡くなった事で先日新しい国防大臣が任命されました。

去年から麻薬がらみの殺人事件が激増しているコロンビアですが、対策も含め何かしらプラスの変化があることを願っています。

 

Profile

著者プロフィール
松尾彩香

コーヒー農家を営む元OL。コーヒーを栽培する一方で、コーヒー農家の貧困や後継者不足問題、コロンビアでの生活についてSNSを通じて発信。朝の一杯のコーヒーに潜む裏話から、日本ではあまり報じられないコロンビアの情勢まで幅広くお伝えします。

ブログ: http://campesinita.com

Twitter: @maon_maon_maon

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