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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

初めてのロングドレスに大さわぎ

それからしばらくは、また画面上でドレスとの格闘が続いた。1軒ずつ店を訪ねるより時間が短縮できるからだ。たぶん何百着という数を見たと思うけれど、最後は試着しないとわからないので、サイズ違いなど6、7着を取り寄せて、家でこっそり1人ファッションショーをした。幸い、購入したものの返品がこの国では簡単であることがありがたかった。夏のセールが始まっていたのもラッキーで、ビーチシックらしいものをお得に見つけ、マダムと新婦に写真を送って承認を得た。ほっ。

サマーフォーマルの方は、以前譲り受けた黒いシルクのドレスを着ることにした。すっかり忘れていたものをクローゼットのすみで見つけたのだ。タイの友人にその話をすると、「結婚式に黒を着てもいいのかな。タイでは絶対ダメなんだよ」と返ってきたのであわてたけれど、フォーマルな色だから大丈夫、とマダムにお墨付きをもらうことができた。最後に行きつけのお直し屋さんで丈を調整してもらって、なんとか形になった。ふたたび、ほっ。

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お騒がせしたので、わたしが着たドレスでも見ていってください。左のサマードレスは本来ミディ丈なのに、わたしが着るとロング丈。ぎりぎりセーフのバランスでした。もう一方は黒のシンプルなドレスなので、スカーフでサマーっぽくしてみたたつもり。筆者撮影

スペインでは同じ結婚式に出席する友人夫妻の家にお世話になっていた。彼らもスーパーリッチなパーティー族で、この式の2日後に別の結婚式が控えていたほどだ。そんな奥さんが、出かける時になって、「ハイヒールとサンダル、どっちがいいと思う?」とわたしに訊いてきた。初心者のわたしにアドバイスを求めてます?

迷ったけれど、ハイヒールを履くのが不安な様子だったので、サンダルを勧めてみた。キラキラの飾りが付いていて、きれいだったし。その意見を受け入れてくれた彼女の選択は会場でもまったく問題がなく、彼女との距離もぐっと近づいた気がした。

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披露宴の後半は、お約束のダンスタイム。色とりどりのドレスが入り混じりあって揺れる様子が美しかった。筆者撮影

会場に着いて周りを観察してみると、ビーチシックもサマーフォーマルもあまり差がなく、2日とも、夏らしい素材、色使い、デザインのドレスを着ていればなんでもありという感じだった。ちなみに男性の方は、麻やコットンの明るい色のスーツとシャツの組み合わせが多く、式以外ではジャケットを脱いでいた。

その場で大勢と混じってしまえば、少しぐらいはみ出していても、むしろ個性になる。若いお嬢さんが思い思いに着飾っている姿はとりわけ眼福だったけれど、結局のところ、好きなものを着て堂々とその場を楽しんでいれば、誰もが美しく見えた。会場からあふれ出る幸せ&お祝いオーラの力もあったかもしれない。

ドレスコードというのは結局、何度も経験して体得していくものなのだろう。慣れた人でも迷うようだから、正解はないのかもしれない。初めてのロングドレスにあたふたしてしまったけれど、選ぶ過程では女友だちとわいわいできたし、ハリウッド映画のようなきらびやかな集い(と、わたしの目には映ったのです)にも目を楽しませてもらった。ロングドレスを着るパーティーも悪くないなあ。

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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