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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

初めてのロングドレスで大さわぎ

1日目のビーチパーティー(本文参照)。服装はそれぞれ個性がありつつ、全体では海辺の雰囲気になっていて、見ているだけで楽しく、わたしはドレスウォッチングにいそしんだ。筆者撮影

夏の終わりに若い友人の結婚式に参列した。会場は南スペインのコスタ・デル・ソル、太陽の海岸と呼ばれるリゾート地。英国で人気の休暇先なので、ついでに観光もして、たっぷり太陽を浴び、広い海に癒されてきた。

この結婚式が豪華なパーティーになることはわかっていた。新婦は夫が仕事で知り合ったスーパーリッチ夫妻のお嬢さんなのだ。この家族とは30 年以上のお付き合いがあり、新婦は幼い頃に(わが)夫のお嫁さんになると言っていたらしい。ふだんは華やかな席へのご招待をお断りするわが家も、この式に参列しないわけにはいかない。

受け取った招待状には、1日目にビーチパーティー、2日目に結婚式と披露宴と書かれていた。ドレスコードは、最初が「ビーチシック」、次が「サマーフォーマル」。え、それって何を着ればいいの?  フォーマルの基本もあやふやなのに、アレンジできる気がしない。ビーチシックという言葉の横にはドレスの例も添えられていたけれど、ファッション誌から切り抜いたようなモデルの姿を見ても、それを着る自分がまったく想像できなかった。

英国に暮らしてもうすぐ20年。何度かあったフォーマルな場では、慣れない着物でなんとか通していた。暑い夏にパーティーがあった時は、「わざわざドレスを買うことないよ!」と、友人 (今回の新婦のお母さん)がすばらしいコレクションを何着か貸してくれたので、これまで自分でロングドレスを選んだことがなかった。

だからこの歳になってドレスだなんて照れくさかったし、自分が着こなせるとも思えなかった。着飾ったマダムたちと並ぶのも気後れがする。

けれど今度こそ自分でドレスを選ぶ時が来たのだ。着物は暑いだろうし、新婦の母にはさすがに借りられない。

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ハロッズのフォーマルドレス売り場。すべての結婚式にロングドレスが必要なわけではなく、フォーマルと書いていない昼間の式なら、英国式にきれいめなワンピースを選んでいる。筆者撮影

だいたいロングドレスというのはどこで売っているのだろう? 町で見かけた覚えはなかったし、そもそも、どんな形や素材があるのかまったくイメージがわかなかった。ドレスはあちこちで目にしていたはずなのに、自分が着るとは思っていなかったからなあ。

ものすごく高価なんだろうかという不安もあった。前にロングドレスを「仕立てた」知り合いが、高級店の奥の部屋でシャンパン片手に採寸したと話すのを聞いて、あまりに自分とかけ離れた世界に気が遠くなりそうになった。その話のインパクトが強かったせいか、そのうちフォーマルドレスは高級品という思い込みが自分の中で生まれ、もくもくと妄想が広がって勝手に怖気づいていた気もする。

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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