
England Swings!
初めてのロングドレスに大さわぎ
まずは具体的なイメージを持たねばと思い、ハロッズに行ってみた。老舗の高級デパートなら、季節を問わずロングドレスを置いているはず、と期待して。
フロアガイドを見て、初めて行くセクションに足を踏み入れると、色とりどりのドレスが美しく並んでいた。光沢ある生地、スパンコール、ふわふわしたもの、袖が長いものなどなど。聞いたことのないブランド名も多く、まさに未知の世界だった。
デザイン、色、素材と値段もしっかりチェックさせてもらって、視察と目の保養は終了。ここで試着するのは勇気がいるだろうなあと恐れつつ、とりあえず採寸しなくてもドレスが買えることはわかった。価格もピンからキリまでで、セールの対象なら2、3万円からあるという事実にもほっとした。
このイメージを頭に置いて、今度はネットで検索してみると、ものすごい数のドレスが画面に現れた。町で見かけるブランドでもずいぶんロングドレスを作っていることがわかり、さらに安心した。
ただ、あまりの数の多さに圧倒されてしまったので、気分を変えて新婦本人や同じ結婚式に列席する年上のマダムな友人にも相談してみた。けれど、どちらも「何でもいいのよ」と気楽に構えていて、マダムには、「どうしようかなあ。あなたは何を着るの?」と逆に質問される始末。慣れているとそんなものなのかもしれない。
この2人との話では具体的な結論は出なかったけれど、ドレスやアクセサリーの女子トークに花が咲き、何か思いついたら報告し合うことになった。マダムも迷っていることがわかって、気持ちがさらに落ち着いた。
毎日のようにドレスの写真を次々に眺めていたわたしは、隣に住む98歳の友人とのおしゃべりでも、いつの間にかこの話をしていた。すると派手なパーティーなんて苦手そうなタイプの彼女が、「高級住宅地のチャリティショップに行くといいわ」という意外な耳寄り情報を提供してくれた。
チャリティショップとは、寄付された不用品を安く売って、収益を慈善活動に充てる店のことだ。英国ではどの町にもあるけれど、不用品はたいてい近所から持ち込まれる。「リッチなエリアだと、処分するものも上等なのよ。娘はそれで何度もドレスを買ったらしいわ」なーるほど!
けれど、何軒かのぞいてみて、この方法はわたしには難易度が高いことがわかった。この国では日本人のわたしの体は小さくて、ふだんでも自分のサイズを見つけるのに苦労する。まして、品数がかなり限られたチャリティショップで、サイズが合い、かつ気に入ったロングドレスを見つける確率は、残念ながらとても低いのだった。

- ラッシャー貴子
ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。
ブログ:ロンドン 2人暮らし
Twitter:@lonlonsmile