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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

アガサ・クリスティが愛したデヴォンの別荘、グリーンウェイ前編 近くて遥かな道のり

グリーンウェイには、実は2年前にも一度訪れたことがある。けれど邸内を見学したところで大雨になり、庭に出ることができないまま、後ろ髪を引かれる思いで屋敷を後にすることになった。それがずっと頭から離れなかったので、この夏やはり再訪することにした。


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トーキーで宿泊したインペリアル・ホテルからはトー湾を見晴らすことができて気持ちがよかった! クリスティもよく訪れ、数々の作品に名前を変えて登場するホテルだ。筆者撮影

グリーンウェイには簡単にはたどり着けない。もちろん車で行くことはでき、2年前は友人の車を借りてそうした。トーキーからたった30分ほどの距離だとはいえ、屋敷に近づくにつれてどんどん細くなる山道がやっかいだったことが忘れられない。
道幅は車1台分強くらいしかなく、両脇にも背の高い木が迫っているので、緑とは言えトンネルのような圧迫感がある。車も馬も歩行者も通る道なので、何かに出会うたび、歩くくらいまでスピードを落として、ぎりぎりにすれ違うことになる。

道端にはところどころ待避スペースが作ってあって、そこに車を寄せてやり過ごす。待避スペースが近くにないと、どちらかが細い道をバックしなければならず、これまためんどうだ。こういう時、英国のドライバーはたいてい気持ちよく譲り合うので、そこは心が和むのだけれど、道端に車を寄せた時には、ぶつからないまでも、周りの草木で車に傷がつくことも多いらしい。さらにこの辺りは山や木々にさえぎられて電波が悪く、カーナビの反応が鈍くて何度も道を間違えたので、珍しく夫の機嫌もみるみる悪くなり、いろいろな意味でスリル満点のドライブになった。
こういう道自体は英国の田舎では珍しくないけれど、運転していた夫は友人の車を傷つけないようにかなり緊張したようで、その日のうちに、「あの道はもう絶対に運転しないから!」と宣言していた。

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2年前にグリーンウェイに向かった道。対向車と馬のほか、向こうには歩行者もいてなかなかの渋滞だ。この写真では、対向車がすでに待避スペースに車を寄せて待ってくれている。筆者撮影

ペーパードライバーのわたしに山道はとても運転できないけれど、それでもあきらめきれずに調べていると、宿泊するトーキーから観光用の蒸気機関車と船を乗り継いで行けることがわかった。汽車にはポワロやミス・マープルもよく乗っている。これしかない! 

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著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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