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England Swings!

ラッシャー貴子|イギリス

1週間に嵐が3つやってきた!

この動画に出てくる他にも被害は甚大で、交通機関がまひしてロンドンと郊外や地方を結ぶ電車が長時間まったく動かず、もちろん飛行機もキャンセルが相次いだ。140万世帯が停電になり、断水がその後何日も続いた地域もあって、死者も3人出ている。ユーニスは英国を抜けた後も、ヨーロッパ大陸で暴れまくってさらに大きな被害を及ぼした。

個人的に聞いた被害の中でいちばん大きかったのは、イングランド西部のデヴォンに住む友人の話だった。ストーム・ユーニスの強風でお隣さんの車に大木が倒れて、車の屋根がぺちゃんこにつぶれたそうだ。すぐに写真を送ってくれたのだけど、車の傍らにノコギリを手にして立っている人が何人かいたので、「ひゃー、片付けは後にして! 今はとりあえず家に入って!」と、ついおせっかいなメッセージを送ってしまった。翌日はご近所総出で片付けたそう。

ストーム・ユーニスはロンドンでも被害が大きく、確かに大変な嵐だったのに、わたしには何か違和感があった。なぜかそれほど大きいと感じられなかったのだ。たまたま自分が被害を受けなかったからか? と考えていて、思い当たったのは雨が降らなかったからじゃないかということだった。

台風に慣れているわたしは、嵐といえば雨と風がセットになっているものと思い込んでいたのだと思う。今回の嵐と比べるまで考えもしなかったことだ。こちらの嵐はとにかく風が基本で、雨が降るとは限らないようだ。ストーム・ユーニスの強風が吹き荒れた日も、わが家のあたりは青空さえ見えていた。なんだか嵐らしくないと思いませんか? 

ついでに言うと、嵐の時に天気が悪くて気温が低ければ雪が降るというのも衝撃だった。雪は(わたしの中で嵐の代表である)台風とまったく相容れないものだから。ところが、ストーム・ユーニスの影響で北部のスコットランドや北イングランドは大雪になった。気がつかないうちに、わたしは台風のあのむっとした熱い湿った空気と嵐とを結びつけていたらしい。

さらに言うと、台風の後は(雨がやむから)台風一過でからっと晴れるけれど、英国の嵐にはそれがない。だから、いつ終わったかよくわからなくて、すっきりしない。特に今回は立て続けに嵐がきていたので、時々晴れ間が見えつつ、もやもやした天気が続いた。ふだんからはっきりしない天気が多い英国のこと。嵐もなんとなくやってきて、なんとなく去っていくらしい。

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これもわが家の近所。売り家の看板の支柱が折れていたのも驚いたけれど、なんと交通標識の「板」の部分が飛ばされて枠と柱だけが残っていた。真ん中の抜けているところには、「徐行」の標識があった、のだと思う。金属製の標識まで飛ばされるなんて本当に危ない。 筆者撮影

ユーニスが英国を去った2日後、2月20日の夜遅くに、今度はストーム・フランクリン(Storm Franklin)がやってきた。ロンドンの警報は中レベルだったとはいえ、風は強かった。最大風速が時速87マイル(約140キロ)で雨も強かったフランクリンの被害は中部や北部に多く、広い範囲で起きた洪水はその後何日も続いた。

こんなに大きな嵐が立て続けに来るなんて、やっぱり地球温暖化の影響かしらと、つい考えてしまう。マスコミでもその懸念が取り上げられていたけれど、英国気象庁によれば、今のところ今回の大きな嵐と温暖化を関連づける証拠はないそうだ。春先、特に3月には風が強いことが多いので、今回はたまたま少し早かっただけ、と思いたい。

ところで先ほどのストーム・ユーニスのBBC動画をご覧になった方は、最後の方にちらっと紹介されたBig Jet TVって何だろう? と思われたかもしれない。これは飛行機オタクのジェリー・ダイヤーさんが飛行機愛を炸裂させているYouTubeチャンネルだ。ふだんから国内外のあちこちの空港で飛行機の着陸を中継していて、今回はストーム・ユーニスの強風の中、ロンドンのヒースロー空港にふらふらと着陸する飛行機の様子をコメントとともに生配信してバズった。嵐に備えて家で待機していた人が多かったこともあってか、23万人以上が視聴し、著名人が話題にしてTwitterでもトレンド入りした。

何はともあれ、ジェリーさんの様子をご覧ください。

BBCのYouTube投稿より、当日のジェリーさんの中継の一部と、ご本人のインタビュー。ジェリーさんの中継は、「気をつけて〜、気をつけて〜」「行けー!」「そぉっとね〜」「おおー、やったぜ!」とまるでパイロットに話しかけているよう。動画にちらっと映るように当日もバンの上に立って、この高いテンションのまま約7時間も中継を続けた。風が強い日はパイロットのテクニックがよくわかるので、中継するのが特に楽しいそう。

お父さんがパイロットで、ヒースロー空港の近くで育ち、子どもの頃から飛行機が好きだったジェリーさんは、2015年にこのチャンネルを始めた。これは趣味ではなくて、仕事としてやっている配信だ。

強風の中で着陸する飛行機は怖いので、わたしは後で録画を少し見ただけだけれど、たくさんの人が夢中になるのがわかる気がした。飛行機が無事に着陸してほっとするのはもちろん、飛行機愛にあふれるジェリーさんの中継がどこまでも熱い。視聴者に向けてテクニックの解説もするものの、全体としては、まるでパイロットに(というか飛行機に?)語りかけ、応援しているようだ。

他のテレビ局の取材を受けたジェリーさんは、質問に答えている間に飛行機が通ると、インタビューそっちのけで着陸の中継を始めていた。どれだけ好きなんだ! また別のインタビューでは、「こんなに見てくれて嬉しいけど、本当のヒーローは何と言ってもパイロットと業界で働くすべての人たちだ。最大の敬意を表する」と答えていて泣けた。「推し」は尊い。

 

Profile

著者プロフィール
ラッシャー貴子

ロンドン在住15年目の英語翻訳者、英国旅行ライター。共訳書『ウェブスター辞書あるいは英語をめぐる冒険』、訳書『Why on Earth アイスランド縦断記』、翻訳協力『アメリカの大学生が学んでいる伝え方の教科書』、『英語はもっとイディオムで話そう』など。違う文化や人の暮らしに興味あり。世界中から人が集まるコスモポリタンなロンドンの風景や出会った人たち、英国らしさ、日本人として考えることなどを綴ります。

ブログ:ロンドン 2人暮らし

Twitter:@lonlonsmile

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