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平野美紀|オーストラリア

3万羽超えのペリカンが大集合!オーストラリア最大の繁殖イベントを記録

オーストラリアに生息するコシグロペリカン。沿岸部では割とどこでも手軽に見ることができる。(Credit:Hanis-iStock)

オーストラリアには、野生のペリカンが生息している。日本では「コシグロペリカン」または「オーストラリアペリカン」とも呼ばれる背中の黒い羽と大きなピンクの嘴が特徴の大型ペリカンだ。

全長は1.5~2メートル、体重は10kg前後にも及ぶ。我が家の近くには、ペリカンの家族が棲み着いており、電灯の上にとまって休む姿は、この町のアイコンとして親しまれている。

大きな体を揺らしながらノソノソと歩く姿はユニークだが、近くに寄って来られるとちょっと怖い。なにせ、私よりも大きな体をしているうえ、飲み込まれそうなほど大きな嘴を目の前でパカッと開けられると、ビビッてしまうほどだ。

ときおり、我が家の上空に飛来することもあるが、太陽が出ている時にやってくると、地面に大きな影ができるのですぐにわかる。大きな物体が風に乗って、スーッと空を滑るように帆翔(翼を広げたまま羽ばたかずに上昇気流を利用して飛ぶ様)する姿は実に優雅だ。

そんな馴染み深いペリカンが、ニューサウスウェールズ州内陸部のブリュースター湖に 3万羽以上集まったことが確認され、繁殖のために集まった数としてオーストラリア国内の記録を塗り替えた。

3万羽超えのペリカン大集合で記録更新

オーストラリア大陸の内陸部は、普段はほとんど雨が降らない砂漠地帯だが、降雨シーズンになると降った雨がそこかしこで大きな水溜りとなって季節的な湖ができたり、ほとんど干上がっていた川や湖が潤って大きな水場を作ったりする場所がたくさんある。

今夏、雨が多かったニューサウスウェールズ州では、州内陸部のブリュースター湖にも豊富な水が蓄えられ、大量の魚が繁殖。ペリカンたちの繁殖にとっても好条件が整ったという。ペリカンの雛は、毎日0.5~1キログラムの餌を必要するため、繁殖シーズンになると、こうした餌となる豊富な魚を求めて内陸部へ集まることがあるが、今年は、国内最大となる3万羽を超えで、この半年内に記録されたこれまでの最大1万5,000羽の記録をさらに更新したそうだ。

州政府の計画環境局で環境水管理を担当するシニア管理官であるジョアン・レネハンさんによると、通常、ペリカンの繁殖は沿岸部などを中心に多くても6~8千羽が集まる程度なので、ここまで大規模な繁殖イベントは非常に珍しいという。(参照

ペリカン個体数回復の好機

今回、ニューサウスウェールズ州内陸部のブリュースター湖に集まった3万羽超えのペリカンの大群。(ABC News Australia 公式YouTube)

洪水発生などで、人間にとっては厄介な雨が続く異常気象も、ペリカンたちにとってはラッキーな気候となっているようだ。

オーストラリアの野生ペリカンは、種の存続が脅威にさらされているわけではないが、個体数は1970年代以降、確実に減少している。そのため、今回見られたような大規模繁殖イベントは、ペリカンの将来にとっても極めて重要だという。

ペリカンを含む水鳥たちは、水系の変化と水場の減少、開発による営巣地の喪失の問題に直面している。こうした危機から鳥たちを守るため、大学の研究者、保護活動家、州当局が協力して、AI(人工知能)やドローンなどを取り入れた営巣地調査を積極的に行っていくそうだ。

レネハンさんは言う。

「私たちは、彼らについてほとんど知らないのです。ペリカンたちがどのようにして内陸部に繁殖に最適な水場ができたことを知るのか...。この昔からの疑問に答えたいと思います」

ここのところ、ペンギン・パレードの5千羽超え大行進迷惑だけど憎めないインコやオウムといった鳥の話題が続いたが、こうしてみるとオーストラリアは本当に「鳥王国」だなぁとつくづく思う。まだまだわからないことだらけの鳥王国、バンザイ!〈了〉

 

Profile

著者プロフィール
平野美紀

6年半暮らしたロンドンからシドニーへ移住。在英時代より雑誌への執筆を開始し、渡豪後は旅行を中心にジャーナリスト/ライターとして各種メディアへの執筆及びラジオやテレビへレポート出演する傍ら、情報サイト「オーストラリア NOW!」 の運営や取材撮影メディアコーディネーターもこなす。豪野生動物関連資格保有。在豪23年目。

Twitter:@mikihirano

個人ブログ On Time:http://tabimag.com/blog/

メディアコーディネーター・ブログ:https://waveplanning.net/category/blog/

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