コラム

バイデン政権が狙うIPEFによるWTO改革

2022年06月10日(金)18時15分

インドを巻き込む形で推進することの意義

また、仮に何らかの国際的問題が生じた際に、WTOの場で知的財産保護規定が免除されることが常態化した場合、企業は積極的にイノベーションに資源を投じることは困難となるだろう。一見すると同免除行為が人道上正しく見えたとしても、結果としてそれらの行為は多くの問題解決に繋がる取り組みを放棄することに等しいことになるだろう。

バイデン政権がIPEFを通じて意図していることは、必ずしも中国の力が十分に及んでいない国々に対して知的財産権保護を求めることにあると言えるだろう。知的財産権保護に向けた積極的な枠組みを東南アジア諸国だけでなくインドを巻き込む形で推進することの意義は大きい。

WTOの枠外で欧米及び日本が影響力を行使できる枠組みを作り、中国の影響力拡大によって変質しつつあるWTOの劣化をせき止め、再び知財保護に向けた機運をもたらすことが重要だ。

プロフィール

渡瀬 裕哉

国際政治アナリスト、早稲田大学招聘研究員
1981年生まれ。早稲田大学大学院公共経営研究科修了。 機関投資家・ヘッジファンド等のプロフェッショナルな投資家向けの米国政治の講師として活躍。日米間のビジネスサポートに取り組み、米国共和党保守派と深い関係を有することからTokyo Tea Partyを創設。全米の保守派指導者が集うFREEPACにおいて日本人初の来賓となった。主な著作は『日本人の知らないトランプ再選のシナリオ』(産学社)、『トランプの黒幕 日本人が知らない共和党保守派の正体』(祥伝社)、『なぜ、成熟した民主主義は分断を生み出すのか』(すばる舎)、『メディアが絶対に知らない2020年の米国と日本』(PHP新書)、『2020年大統領選挙後の世界と日本 ”トランプorバイデン”アメリカの選択』(すばる舎)

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