コラム

トランプ当選を予測した大学教授が選んだ2020大統領選の勝者は?

2020年08月28日(金)19時00分

リクトマン教授は前回2016年の大統領選でトランプ当選を予測した Bryan Snyder-REUTERS

<新型コロナと経済への深刻な影響、さらにBLM運動の広がりなど、トランプ政権が覆る要素は揃った>

2016年の大統領選挙では、選挙予測の専門家たちのほとんどがヒラリー・クリントンの勝利を予測していた。その中には、2008年の大統領選挙でアメリカ50州のうち49州の結果を正しく予測して有名になった統計学者のネイト・シルバーも含まれる。

そんな状況下で、トランプ勝利を予測した一人が、アメリカン大学で政治史を教えるアラン・リクトマン教授だった。シルバーなど選挙予測の専門家は世論調査などのデータを使うが、リクトマンは世論調査をまったく使わない独自のメソッドを編み出し、その方法で1984年から2016年まですべての大統領選を正確に予測したのである。

リクトマン教授は、2017年発売の本でトランプ大統領が弾劾されることを予言し、それは2019年末に実現した。

リクトマン教授が判定に使うのは、現職大統領(あるいは現職大統領が属する党の指名候補)が再選されるための13の鍵である。教授が「ホワイトハウスへの鍵」と呼ぶ13の要点をまず説明しよう。

1.現職大統領の党が、中間選挙の結果、下院で以前より多くの席を獲得している。

2.予備選で、現職大統領(あるいは現職大統領の党の指名候補)に有力な対立候補がいなかった。

3.現職大統領の党の指名候補は、現職大統領である。

4.第三政党あるいは無所属の有力な候補がいない。

5.短期的な経済状況:選挙期間中に景気後退がない。

6.長期的な経済状況:現職大統領の任期中に、国民1人頭の所得が、前大統領の2期の平均と同じか、それを越えている。

7.現職政権が、全米に影響を与える大きな政策の変更を実施した。

8.現職大統領の任期中に継続的な社会不安がない。

9.現職政権が、大きなスキャンダルで汚名を受けていない。

10.現職政権が、外交と軍事で大きな失敗を犯していない。

11.現職政権が、外交と軍事で大きな達成を果たした。

12.現職大統領あるいはその党の指名候補にカリスマ性がある。あるいは、国民的英雄である。

13.対立する党の候補にカリスマ性がない。あるいは、国民的英雄ではない。

リクトマン教授によると、国民は一般的に安定を願うものであり、現在政権を握っている党のパフォーマンスを判定して投票する。この13の鍵のうち、6以上が「ノー」の場合に、政治的な「地震」が起きて政権が覆るというのだ。トランプ大統領の任期中に鍵はいくつか切り替わった。

<関連記事:トランプはもう負けている?共和党大会
<関連記事:トランプの岩盤支持層「白人キリスト教福音派」もトランプ離れ

プロフィール

渡辺由佳里

Yukari Watanabe <Twitter Address https://twitter.com/YukariWatanabe
アメリカ・ボストン在住のエッセイスト、翻訳家。兵庫県生まれ。外資系企業勤務などを経て95年にアメリカに移住。2001年に小説『ノーティアーズ』(新潮社)で小説新潮長篇新人賞受賞。近著に『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)、『トランプがはじめた21世紀の南北戦争』(晶文社)などがある。翻訳には、レベッカ・ソルニット『それを、真の名で呼ぶならば』(岩波書店)、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP社、日経ビジネス人文庫)、マリア・V スナイダー『毒見師イレーナ』(ハーパーコリンズ)がある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

中国の検閲当局、不動産市場の「悲観論」投稿取り締ま

ワールド

豪のSNS年齢制限、ユーチューブも「順守」表明

ビジネス

米ネットフリックス、WBDとの事業統合で消費者に恩

ビジネス

インド通貨ルピーが史上最安値更新、1ドル90ルピー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大気質指数200超え!テヘランのスモッグは「殺人レベル」、最悪の環境危機の原因とは?
  • 2
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇気」
  • 3
    トランプ支持率がさらに低迷、保守地盤でも民主党が猛追
  • 4
    コンセントが足りない!...パナソニックが「四隅配置…
  • 5
    若者から中高年まで ── 韓国を襲う「自殺の連鎖」が止…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    海底ケーブルを守れ──NATOが導入する新型水中ドロー…
  • 8
    「世界一幸せな国」フィンランドの今...ノキアの携帯…
  • 9
    22歳女教師、13歳の生徒に「わいせつコンテンツ」送…
  • 10
    もう無茶苦茶...トランプ政権下で行われた「シャーロ…
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 3
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 8
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story