コラム

「ローンオフェンダー」とは何か?――単独犯テロの3類型と現代テロ対策の行方

2025年11月18日(火)17時55分

タイプ3 自己過激化型 非接触・インターネット感化による単独テロ

この類型は、テロ組織との物理的、直接的な繋がりを一切持たず、主にインターネットやSNSを通じて過激思想に触れ、完全に自らの意思と判断によってテロ事件を起こす単独犯を指す。これは、近年最も増加し、問題視されているタイプである。

テロ組織の高度なプロパガンダ映像やオンラインマガジン、あるいは他の過激思想のフォロワーとの交流を通じて、自己完結的に過激化(Self-Radicalization)を遂げる。犯行の手法は、入手が容易なナイフ、車両、簡素な爆発物などに頼ることが多く、標的も象徴的な場所や不特定多数を狙う傾向が見られる。


テロ組織との接点がないため、従来の情報機関の監視対象になりにくく、犯行の計画を事前に察知することが困難であるという点が、この類型の最大の課題である。彼らの動機は、過激思想だけでなく、個人的な社会不適応、精神的な問題、あるいは過去の失敗など、複雑な要因と絡み合っている場合が多く、その内面的な過激化プロセスを特定することが課題となる。

そもそも、これらの行為がテロに該当するのかという議論も存在する。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

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