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インド進出企業に迫る「恒常的リスク」...ニューデリー・テロ事件が突きつけた現実
Amit kg -shutterstock-
<パキスタン拠点の過激派による脅威に加え、ISやアルカイダなど国際組織の浸透も進む中、日本企業はインド駐在員の安全確保に向けた実効的なリスク管理体制の構築が急務となっている>
2025年11月のニューデリー・テロ事件は、インドの経済成長の陰に潜む、恒常的かつ複合的なテロの脅威を露呈した。パキスタンを拠点とするイスラム過激派による脅威に加え、ISやアルカイダなど国際的過激派組織の浸透も進み、主要都市などでは潜在的な脅威がある。
2025年11月10日、インドの首都ニューデリーにある世界遺産「赤い城」付近で車両爆発テロが発生した。この無差別的な攻撃は、国際社会に対して、インドの経済成長の光の陰に、依然として深く、そして恒常的に存在するテロの暗い影を印象付ける結果となった。
インド市場への進出を加速させ、駐在員と家族の安全確保を責務とする日本企業は、この事件を教訓とし、インド社会に内在するテロの潜在的リスクを正確に理解し、それに基づいたリスクマネジメント体制を構築する必要がある。
恒常的なテロの脅威:パキスタンに拠点を置くイスラム過激派の浸透
ニューデリーのテロ事件は、パキスタンに拠点を置くイスラム過激派組織「ジャイシュ・エ・ムハンマド(JeM)」などの関与が疑われている。この構図は、インドが長年にわたり直面してきた治安問題の根幹であり、テロの脅威が単なる一時的な事象ではなく、地政学的な対立構造に深く根差した恒常的なリスクであることを示している。
インド国内のテロ活動の歴史を紐解くと、その中心は一貫してジャンムー・カシミール地方であった。この係争地帯では、「ラシュカレトイバ(LeT)」や「JeM」といった組織が、インドに対する敵意を強く示し、分離独立やパキスタンへの編入などを目指して活動を続けてきた。
これらの組織は、パキスタン国内の支援と拠点を利用し、国境を越えた武装侵入、治安部隊への攻撃、そして住民の過激化を推進してきた。2001年のインド国会議事堂襲撃事件や、2019年のプールワマ襲撃事件など、インドの中枢や治安部隊を標的とした大規模なテロ事件の多くは、これらのカシミールを拠点とする過激派組織が関与してきた。
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