コラム

2026年、テロは「国家」を超える──イスラム国が変貌させた世界の脅威

2026年01月02日(金)08時25分
多機能型テロ組織としてのイスラム国

Mohammad Bash -shutterstock-

<年が明けた2026年の今、ISは依然として国際社会に深い影を落としている。その影響力は消えるどころか、ブランドとしての存在感を増し、思想とネットワークを世界中に拡散させている>

2019年の「カリフ制国家」崩壊後、ISは消滅するどころか、より捕捉困難な「多機能型テロ組織」へと進化した。特定の領土に縛られず、世界各地の武装勢力に看板を貸し出す「フランチャイズ化」と、SNSを通じた「個人の精神への浸透」を両立させるIS。

現代の国際社会が直面しているのは、軍事力だけでは封じ込めることのできない、グローバルな「過激思想のブランド化」という新たな脅威である。

多機能型テロ組織としてのイスラム国


2010年代半ば、シリアとイラクの広大な領土を占拠し、文字通りの「国家」として国際秩序に挑戦した「イスラム国(IS)」。かつての物理的な支配領域である「カリフ制国家」は、国際有志連合の軍事作戦によって2019年に事実上の崩壊を遂げた。

しかし、この軍事的勝利は、ISという存在の終焉を意味するものではなかった。むしろ、現代のISは、特定の領土に縛られない「多機能型テロ組織」へとその姿を変え、国際社会にとってより捕捉困難で、より根深い脅威へと進化を遂げている。

今日のISを分析する上で最も重要な視点は、それが単一の指揮命令系統を持つ軍事組織である以上に、イスラム過激派の世界において圧倒的な影響力を持つ「ブランド」として機能しているという事実である。

かつての初期のアルカイダが、厳格な入会審査と中央集権的なネットワークを重視した「排他的なエリート組織」であったのに対し、ISは当初からその過激な暴力性と明快な教義をパッケージ化し、世界中の武装勢力に提供してきた。

プロフィール

和田 大樹

CEO, Strategic Intelligence Inc. / 代表取締役社長
専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障、地政学リスクなど。海外研究機関や国内の大学で特任教授や非常勤講師を兼務。また、国内外の企業に対して地政学リスク分野で情報提供を行うインテリジェンス会社の代表を務める。

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