コラム

対テロ優先から対中優先へ――9.11から読み解く米中関係の転換

2025年09月11日(木)14時11分

米国にとっての対テロの優先順位

今日、米国は依然としてアルカイダやイスラム国(それらの系統組織含む)に対し、ソマリアやイエメンなどで断続的に空爆を行なっており、その潜在的な脅威を注視している。しかし、9.11同時多発テロから24年が経過し、米国にとっての対テロは、言うまでもなく中国やロシアの後に位置付けられる。

第一次トランプ政権は2020年10月、2004年に当時のブッシュ政権が決定したETIMのテロ組織指定について、「ETIMが存続している確証はなく、それによって10年あまりわたって中国共産党が新疆ウイグル自治区での弾圧を正当化している」として解除した。

この対テロの優先順位の低下、そして最優先課題に浮上した対中国が、今日の米中関係に如実に現れている。今後、仮に米国権益を標的としたアルカイダ関連のテロが発生したとしても、対テロが対中国に先行することは考えにくく、以前のような米中対テロ協力というものは再現しないだろう。

プロフィール

和田 大樹

株式会社Strategic Intelligence代表取締役社長CEO、清和大学講師(非常勤)。専門分野は国際安全保障論、国際テロリズム論など。大学研究者として国際安全保障的な視点からの研究・教育に従事する傍ら、実務家として海外進出企業向けに政治リスクのコンサルティング業務に従事。

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