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反・一帯一路──パキスタン南西部バルチスタン州における「反中テロ」の最前線
BLAはこの事件では自ら犯行声明を発表していないが、CPEC関連のプロジェクトを標的とした攻撃で、インフラ開発の阻害を狙ったものとみられる。2022年4月には、カラチ大学内の孔子学院近くで自爆テロが発生し、女性戦闘員による攻撃で中国人教師3人とパキスタン人運転手1人が死亡した。
BLAは孔子学院を「中国の覇権拡大の象徴とみなし、女性戦闘員の起用を強調することで組織の多様性と決意を誇示した。この事件は、地元住民に強い印象を与え、BLAの支持を広げる宣伝効果を意図したものと考えられる。
2021年8月のグワダル港での車列攻撃(中国人1人負傷)、
2019年5月のグワダル・パールコンチネンタルホテル襲撃(従業員4人と兵士1人死亡)、
2018年11月のカラチ中国総領事館襲撃(警察官2人を含む4人死亡)、
2017年5月の中国人宣教師誘拐・殺害、
2007年7月の中国人エンジニア誘拐・死亡、
2006年2月のクエッタ自爆テロ(中国人エンジニア3人死亡)など、
BLAは一貫して中国の経済活動を狙ったテロを繰り返し、犯行声明では「中国の資源搾取」や「バルチスタンの占領」といった表現が繰り返され、CPECが貧困や失業の原因ととされるBLAの論理が明確に示されている。
「反中国」テロを繰り返すBLAの狙いとは
BLAのテロは、明確な戦略に基づいている。
第一に、CPECをバルチスタン州の資源(鉄鉱石、天然ガス、銅など)を略奪する「中国の帝国主義的計画」と位置づけ、地元住民の不満を刺激することで支持基盤を強化する。
バルチスタン州はパキスタンで最も貧困と失業率が高い地域であり、CPECによる経済的利益が地元に還元されていないという不満が根強い。BLAは、CPEC関連施設や中国人を攻撃することで、「中国が地域の資源を奪う」というメッセージを強調し、反政府・反中国感情を煽る宣伝を展開している。
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