コラム

標高日本一の空港の「微妙な立ち位置」 交通の要衝・塩尻から松本へ

2020年09月04日(金)16時10分

撮影:内村コースケ

第20回 みどり湖駅 → 平田駅
<令和の新時代を迎えた今、名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた。>

map1.jpg

「日本横断徒歩の旅」全行程の想定最短ルート :Googleマップより

map2.jpg

これまでの19回で実際に歩いてきたルート:YAMAP「活動データ」より

◆フォッサマグナの旅は北アルプス・ステージへ

001.jpg
スタート地点のみどり湖駅。小さな無人駅だが、中央本線の近代化を象徴する記念碑的な駅だ


それにしても今年の梅雨は長かった。これまで歩いてきた関東甲信地方は6月11日に入梅し、8月1日になってようやく梅雨明けが発表された。8月にずれこんだのは、2007年以来13年ぶりだ。それ以上にこの梅雨をひときわ長く感じたのは、文字通り連日雨が続き、それも従来の梅雨の「しとしと」ではなく、常軌を逸した土砂降りの日が多かったからだろう。この「日本横断徒歩の旅」も長雨にたたられ、コロナ禍による外出自粛要請と相まって、この春から夏にかけて進捗が停滞ぎみであった。

ともあれ、行程の「終盤の始まり」に差し掛かかり、ゴールがうっすら見えてきた。今回のスタート地点は、中山道・塩尻宿の手前のみどり湖駅である。前回徒歩で越えた塩尻峠(塩嶺峠)のふもとにあり、東京・諏訪方面から見て松本盆地の入り口に位置する。中央本線は、峠の下の塩嶺トンネル(全長5,994m)を通って諏訪盆地から松本盆地に入ってくるが、みどり湖駅は、塩嶺トンネル開業に伴う中央本線のルート短縮に伴って1983年にできた新駅である。

駅の周りのささやかな新興住宅地を抜けると、すぐに田園風景が広がった。その先にある塩尻の中心市街地を、雄大な北アルプスが見下ろす。この旅のルートは、日本列島の東西の境界地帯であるフォッサマグナに沿っているが、それを証明するかのように、ここまで常に雄大な山岳風景に囲まれて歩いてきた。まず、奥多摩の山々を抜けると富士山が姿を表し、甲府盆地に入ると南アルプスが迎えてくれた。長野県境に近づくにつれ、八ヶ岳の姿が大きくなり、今ここで見えてきた北アルプスは、旅の終盤まで我々の目を楽しませてくれることだろう。フォッサマグナは、北アメリカプレートとユーラシアプレートがぶつかり合う大地溝帯である。その上を時間をかけて歩いていると、山はプレートがぶつかってできた盛り上がりだという地学の基礎が、実際の風景として実感できる。

007.jpg

ここからは、北アルプスを見ながらの旅になる

◆信州vs甲州 ワイン対決は持ち越しに

009.jpg

昨年通過した勝沼に続いて、ここ塩尻も日本を代表するワインの産地である

塩尻市の中心部を目指して田園地帯を歩いていると、グラスに注がれるワインの写真を配した巨大な看板が現れた。塩尻ワインは、第10回で取り上げた勝沼ワインと並ぶ国産ワインの代名詞である。都道府県別のワインの国内生産量では、長野県は山梨県に次ぐ2位。塩尻では赤ワインの原料となるメルロー種の栽培が盛んなため、塩尻ワインと言えば赤のイメージが強い。ぶどう畑の先に見えた巨大看板も、赤ワインであった。

看板は、塩尻のワインの製造大手の一つ、「アルプスワイン」のもので、中央本線の車窓からよく見える本社裏に立っている。塩尻のぶどう栽培は130年前、1890(明治23)年に始まった。前回も、別のワイナリーの直営店で塩尻産ワインを試飲したが、ぶどう畑が集中しているのは、ここ市街東部よりも、この先の西部の「桔梗ヶ原」一帯だ。桔梗ヶ原エリアには、「五一わいん」「信濃ワイン」「井筒ワイン」などの有名ワイナリーが集まっている。勝沼から歩いてきた身としては、そっちにも回って信州vs甲州のワイン対決といきたいところだ。

しかし、残念ながら、日本海を目指して松本方面に進む想定ルートでは、桔梗ヶ原は通らない。ちょっとの寄り道で行けないことはないのだが、僕はお酒がからきし弱くて、正直なところ「ワイン」は、道を曲げてまで惹かれる引力ではないのだ。もう時効なので白状するが、かなり若い頃に本場イタリアのベネチアで、1杯のグラスワインでぶっ倒れて町中で寝込んでしまった経験がある。それがトラウマになっていて、深層心理的に桔梗ヶ原方面へ足が向かなかったのだと、もう一つ言い訳しておこう。そんなわけで、塩尻宿から旧中山道に沿って南西に進めば桔梗ヶ原だったが、まっすぐ北の塩尻駅方面を目指した。

017.jpg

旧中山道・塩尻宿

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新

ワールド

ゼレンスキー氏「ぜい弱な和平合意に署名せず」、新年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 5
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 6
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 7
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story