コラム

カイコからコロナワクチンも? 栄枯盛衰の「シルク岡谷」で伝統産業の未来に触れる

2020年07月10日(金)16時10分

撮影:内村コースケ

第19回 下諏訪駅 → みどり湖駅
<令和の新時代を迎えた今、名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた。>

map1.jpg

「日本横断徒歩の旅」全行程の想定最短ルート :Googleマップより

map2.jpg

これまでの18回で実際に歩いてきたルート:YAMAP「活動データ」より

◆スピードスケートの聖地

7R403449.jpg

多数のオリンピアンを輩出する下諏訪駅前の日本電産サンキョーのトレーニング施設

諏訪大社の4社を1日で巡った前回のゴールは、中央本線の下諏訪駅。その続きとなる今回は、諏訪地域最後の町・岡谷を抜け、塩尻峠の先の松本盆地に下りていく。4回にまたがって歩いてきた諏訪地域の締めくくりである。下諏訪駅前には、諏訪信仰を象徴する「御柱」が建っていた。ここがまだ日本の中心たる諏訪地域の一角であることを実感する(第18回<日本の中心は諏訪にあり 原日本」を求めて諏訪大社の秘密に迫る>参照)。

下諏訪は、手前の上諏訪、次の岡谷に比べて静かな駅前だ。10階建ての日本電産サンキョーの本社ビルがひときわ目立つ。電気機器製造大手・日本電産の子会社で、スピードスケートの平昌五輪金メダリスト・高木菜那選手が所属するスケート部が有名だ。本社ビルに隣接するトレーニング施設には、選手の写真入りの看板が燦然と輝いていた。かつては氷結した諏訪湖でスケートができたこともあって、諏訪地域では特にスピードスケートが盛んだ。北海道出身の高木選手のように活動の場を求めて諏訪の地にやってくる選手も多いし、同じ平昌五輪の金メダリスト・小平奈緒選手のように、地元出身の選手もいる。

◆たまには街道歩きも面白い

7R403466.jpg

裏路地に突如現れた旧中山道

国道20号と諏訪湖に注ぐ砥川が交差するあたりの未舗装の裏路地に、突如「中山道」の看板が現れた。同行者たちと「本当にこんな狭い路地が中山道なのかな?」といぶかっていると、地元のお年寄りが、確かにここが旧中山道で、ずっと先までたどることができると教えてくれた。おそらくここが、中山道最狭小ポイントだろう。

この「日本横断徒歩の旅」では、色々と寄り道をしながらも、概ね国道20号に沿ってきた。20号は東京・日本橋を起点とし、長野県塩尻市が終点である。東京では「甲州街道」と呼ばれることが多いが、前回通った諏訪大社下社秋宮の前までがかつての甲州街道に相当し、その先は中山道と重なっている。より正確には甲府までが「甲州街道・表街道」、甲府―下社が「甲州街道・裏街道)」で、下社から終点の塩尻までは中山道の一部ということになる。

ところで、インターネット上には、僕らの旅と同じように日帰りで繋いでいくスタイルの「街道歩きの旅」の記録が溢れている。僕の兄も若い頃に東海道や中山道を歩いたことがあって、いつか自分も似たようなことをしたいと思い続けてきたのがこの「歩き旅」のきっかけだ。ただし、僕は、旧街道をなぞるスタイルは取らなかった。東京からここまで、甲州街道を目安に歩いてはきたが、寄り道ばかりで甲州街道そのものを歩いた区間はいくらもない。この先も塩尻で中山道を外れて、フォッサマグナの西端付近を歩いて日本海を目指して歩いていく。

僕が見たいのは、究極的には平成から令和に、2020年代に入った「今」の日本である。そして、その「今」に連なる土地土地の歴史と未来への兆しである。諏訪大社の謎に迫った前回のように、神話以前の太古の時代に思いを遡らせることはあっても、視点の中心は常に「今」に据えてきたつもりだ。そのためには、その場その場のアドリブをきかせたコース取りの自由が不可欠だと僕は考える。だから、歩く道が最初から決まっている街道歩きのスタイルは取らなかった。

そんな中で、今回は2時間ほど中山道に沿って歩いただろうか。旧街道沿いの光景は、古い土蔵がある風景に始まり、昭和的なちょっと古い住宅地、平成的な新興住宅地、令和の分譲地へと移り変わって、岡谷市の中心に近づくに従って立派な生け垣が続く旧街道の名残を残す古いお屋敷街が続いた。旧街道に忠実に沿って歩いただけでも、さまざまな時代が見えてくるわけで、それはそれでとても面白い旅のスタイルなのだろうと、思いを新たにした。

7R403486.jpg

旧中山道沿いを歩いているだけでも、江戸時代から令和の今に至るさまざまな町の顔が見え隠れする

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

今、あなたにオススメ

キーワード

ニュース速報

ワールド

欧州8カ国に10%追加関税、トランプ氏表明 グリー

ワールド

ベネズエラ、今月初めの米軍による攻撃で兵士47人死

ワールド

EU、重要インフラでの中国製機器の使用を禁止へ=F

ワールド

イラン抗議デモ、死者3000人超と人権団体 街中は
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手がベネズエラ投資に慎重な理由
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 6
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story