コラム

山梨県東部「郡内地方」を横断 交通の要衝を徒歩で実感する

2019年05月23日(木)17時00分

撮影:内村コースケ

第8回 大月駅前→笹子駅(山梨県大月市)
<平成が終わった2019年から東京オリンピックが開催される2020年にかけて、日本は変革期を迎える。令和の新時代を迎えた今、名実共に「戦後」が終わり、2020年代は新しい世代が新しい日本を築いていくことになるだろう。その新時代の幕開けを、飾らない日常を歩きながら体感したい。そう思って、東京の晴海埠頭から、新潟県糸魚川市の日本海を目指して歩き始めた>

◆「郡内」と「国中」

map1.jpg

「日本横断徒歩の旅」全行程の想定最短ルート :Googleマップより

map2.jpg

これまでの7回で歩いてきたルート:YAMAP「活動データ」より

前々回の第6回「藤野駅→梁川駅」から山梨県を歩いている。江戸時代の地図と今の地図を比べてみると分かるが、山梨県はかつての甲斐国(かいのくに)と領土が一致している。甲斐国は江戸時代には甲府藩(国中)・谷村藩(郡内)に2分されていた。地元では、今でもその区分けが生きていて、甲府盆地を中心とした西の「国中地方」と、東半分の「郡内地方」を分けて捉える傾向にあるという。僕はそのことを、この旅にこれまで2回同行した友人(国中側の小淵沢に家系がある)に聞いて、初めて知った。

今歩いている郡内地方は、東京寄りの相模川・多摩川水系流域と富士五湖エリアを合わせた山梨県東部全体を指し、県庁所在地の甲府市がある国中地方が政治経済の中心であるのに対し、郡内は山と川と湖の観光・レジャーが盛んだ。第6回、第7回では、その郡内を東西に貫く相模川(桂川)に沿って上野原市・大月市を歩いてきた。大月市中心部の大月駅前からスタートする今回は、桂川支流の笹子川に沿って、中央本線の郡内地方最後の駅、笹子駅を目指す。

笹子駅の先は、郡内と国中を分ける笹子峠である。中央自動車道の笹子トンネルと言えば、関東の人には馴染み深いだろう。約4.7kmの長大なトンネルで、2012年の崩落事故はまだ記憶に新しい。笹子峠の下には、このほかに現甲州街道(国道20号)の新笹子トンネルと中央本線の笹子トンネルもあり、計3本の「笹子トンネル」がくり抜かれている。だが、いずれも徒歩では通れないため、徒歩にこだわるこの旅では、国中に抜けるにはトンネルができる前の時代の人々と同じように、山越えしなければならない。その笹子峠と周辺の山の登山口となっている笹子駅まで進み、山越えの足がかりを確保するのが今回のミッションである。

8_003.jpg

今回スタート地点のJR大月駅前。郡内地方の中心である

プロフィール

内村コースケ

1970年ビルマ(現ミャンマー)生まれ。外交官だった父の転勤で少年時代をカナダとイギリスで過ごした。早稲田大学第一文学部卒業後、中日新聞の地方支局と社会部で記者を経験。かねてから希望していたカメラマン職に転じ、同東京本社(東京新聞)写真部でアフガン紛争などの撮影に従事した。2005年よりフリーとなり、「書けて撮れる」フォトジャーナリストとして、海外ニュース、帰国子女教育、地方移住、ペット・動物愛護問題などをテーマに執筆・撮影活動をしている。日本写真家協会(JPS)会員

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story