コラム

文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗り越えられる

2025年11月13日(木)19時05分
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

では、こうした寛容性の根底にあるものは何か。

それは、自国の言語や民族衣装、そしてユネスコ無形文化遺産にも登録されている伝統的なワイン造りなど、ジョージア独自の伝統文化にほかならない。

世界に誇れる自国の文化を持っているからこそ、他者に対しても自信と敬意を持って接することができるのだと私は考えている。


一方、日本はどうだろうか。ジョージアと同じく独自の言語があり、着物や和食、歌舞伎といった豊かな伝統文化がある。ジョージアワインと同様に日本酒も世界に広く知られている。長い歴史の中で育まれてきた日本文化は、誰にも奪うことのできない、かけがえのない財産である。

また、日本はこれまで、外の世界と出合うたびに異文化の良い部分を柔軟に取り入れ、時に独自の形へと「魔改造」しながら、それを自国の文化として昇華してきた。鎖国の時代を経験しても、常に外との接点から学び、国と文化を豊かにしてきたのである。

日本社会は「空気を読む文化」ともいわれるが、その「空気」や「和」を乱さない限り、他人の思想や趣味に干渉することはしない。この他者に対する一定の距離感こそが、実は深い寛容性の表れではないだろうか。

ハイコンテクストな社会であるため、確かに暗黙のルールが多く存在するが、その中でも人々は個性を楽しみ、自由に趣味や生き方を追求することができる。それも日本の魅力の1つだと思う。

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