コラム

大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ

2025年06月10日(火)19時57分
石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)

私も訪日客を案内して実感したが、地図アプリは見えづらく、紙のマップをもらおうと並ぶと2時間かかり、やっと自分の番が来たと思ったら、現金ですか? クレジットですか?と聞かれ200円払わされる。

たった1日楽しむために4~5つのアプリダウンロードが必要で、支払いがなくてもアプリで二重認証が必要、その上バグだらけですぐフリーズして落ちる。キャッシュレス決済が原則でプリペイドカードの案内は見つけられず、クレジットカードや電子マネーなどの決済手段を持たない高齢者や外国人を想定していない。


多くの主要パビリオンは学校以外の団体予約を受け付けず、結果的に外国人ツアー客を締め出している。団体予約を受け付けている数少ないパビリオンで、20人の団体予約申し込みに対し8人のみが当選と連絡を受けて、私は絶句した。団体客なのだから、団体単位での抽選が当然ではないか。

考えてみてほしい、これが学校のクラスだとして、入場できる生徒とできない生徒を分けることなどあり得ない。完璧なはずの日本を訪れた外国人ツアー客に、8人だけしか入場できないとは私にはとても言えなかった。

万博の誘致を進めた松井一郎・前大阪市長は開幕を前にした朝日新聞の取材に「僕も含めて、超高齢化社会の中で、日本人がデジタル技術に精通していなかった」と失敗を認めたが、これでは問題の一部しか認識していない。DX(デジタル・トランスフォーメーション)という目標を追いかけるあまり、UX(ユーザー・エクスペリエンス)がおざなりになったといえば、今どきっぽくて聞こえはいい。

だがそれ以前に、持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献を掲げながら一部の来場客が「取り残された」「不平等な」運営方式、中身の薄い開催理念......。これでは3兆円の経済波及効果のみが目的にしか感じられず、グローバル巨大企業の宣伝ブースと化したパビリオンが並ぶさまは、まさに日本の残念な面をよく表している。

理念もリーダーシップもなく、想像力・共感力も問題点を即座に修正する機動力もなく、テクノロジーは他国に周回遅れ。今の政府にもよく当てはまる話ではないか。政治不信の海を漂流する日本政治より大阪万博に救いがある点は、10月には終わることである。

toykyoeye_ishino_profile_w100.jpg石野シャハラン
SHAHRAN ISHINO
1980年イラン・テヘラン生まれ。2002年に留学のため来日。2015年日本国籍取得。異文化コミュニケーションアドバイザー。YouTube:「イラン出身シャハランの『言いたい放題』」
X(Twitter):@IshinoShahran


プロフィール

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・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

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