コラム

日本人は「アップデート」されたのか?...ジョージア大使が驚かされた「非常に個性的な立候補者たち」

2024年07月26日(金)11時45分
ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)
2024年東京都知事選挙

DAMON/COULTERーSOPA/IMAGESーREUTERS

<周囲に合わせる日本人、周囲に合わせないジョージア人。そう思っていたはずが、まったく逆の現象に遭遇したことで、改めて考えさせられたこととは>

来日したジョージア人が驚くのは、日本の清潔さである。私の妻も初来日したときに「私は外に置いてあるゴミでさえも、抱き締めることができる」と言ったほどだ。

子供の頃から日本に暮らす私にとっては当たり前であるため、さほど気にかけてもいなかったが、他の国と比較しても日本が清潔な国であることは確かであろう。

だが、私はそれよりもむしろ、日本の清潔さの奥にある、心配りをとても高く評価している。


日本人は周囲と半歩違う行動を慎む。あえてここで「半歩」と書いたが、周囲への配慮、いわば「気遣い」ともいえる、その心配りが重要なのだ。

「日本人は同じ格好をする」と半ば批判的に自分たちについて言うことがある。しかし、周囲との調和を乱さないように、その場に合わせて浮かない服を着用することがエチケットなのだ。

他方、ジョージア人と仕事をしたり話をしたりしていると、相手のペースや心の内、そして相手の都合をまるで気にしていないと思うことがある。自分と他者が違うのは当たり前だと思っているせいか、周囲に合わせるという概念が希薄なのだ。

周囲に合わせる日本人、周囲に合わせないジョージア人。そう思っていたのだが、最近、まったく逆の現象に遭遇し、改めて日本人について考えさせられることがあった。

私は普段からジョギングをしているのだが、足の毛がもじゃもじゃで骨格ががっちりしている男性がピンク色のカツラをかぶり、セーラー服姿でジョギングするという光景をこれまで何度も見かけている。

しかし、周囲の人々は特に驚くような様子もなく、ごく普通の光景として受け入れているように見える。もしかしたら見て見ぬふりかもしれないし、そもそも誰も異論を唱えることなどはできないのかもしれない。しかし、それにしてもあまりに溶け込んでいるのだ。

もし、これがジョージアであればどうであろうか。すぐに街じゅうの噂になり、顰蹙(ひんしゅく)を買うこともあるはずだ。もっとも、近年は自由や多様性が謳(歌)われているため、若い世代の受け止め方は異なるかもしれない。そうであったとしても、日本とはまた別の理由や要因で受け入れられると考えている。

ちなみにジョージアは古くからアジアとヨーロッパをつなぐ交通の要で、さまざまな文化や宗教の人々が身を寄せ合って共生してきた国である。寛容さや多様性に対して、頑固で保守的という意味ではないことだけは補足しておきたい。

そして、もう1点、日本人について改めて考えさせられたのは、2024年東京都知事選挙の「非常に個性的な立候補者たち」だった。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トルコがロシアからのガス輸送を保証 =ハンガリー首

ワールド

中国首相「関税の影響ますます明白に」、経済国際機関

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米FOMC控え様子見姿勢も

ビジネス

アングル:ワーナー買収合戦、トランプ一族の利益相反
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    米、ウクライナ支援から「撤退の可能性」──トランプ…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story