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アングル:トランプ関税巡る最高裁判決で市場動揺か、無効判断なら株価に打撃も

2026年01月09日(金)16時15分

写真はワシントンの米最高裁で2024年7月撮影。 REUTERS/Kevin Mohatt

Laura ‍Matthews Suzanne McGee

[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米連邦最高裁は近くトラン‌プ政権の追加関税発動の合法性を巡る訴訟で判断を示すが、判決は金融市場を揺さぶり、特に関税が無効とされた場合には衝撃を与える可能性がある。

連邦最高裁は9日にも、トランプ政権が非常事態に経済取引を制限できる「国際緊急経済権限法(IEEPA)」を‌根拠に、議会の承認を得ないまま「相互関税」​などの追加関税を各国に課したことが合法かどうかの判断を下す。判事は昨年11月の口頭弁論でトランプ氏の課税権限に懐疑的な姿勢を示しており、賭けサイトでは最高裁が関税を認める確率は現在30%となっている。

関税が無効と判断されれば政府歳入にとって打撃となり、米国債利回りが上昇して株式市場全体に新たなボラティリティーの波を引き起こす恐れがあるとアナリストや投資家はみている。

KEYアドバイザーズ・ウェルス・マネジメント‌のエディ・ガブール最高経営責任者(CEO)は「これほど経済的影響の大きい判決は見たことがない。最高裁が大統領に不利な判断を下し、(政府が)全ての関税の返還を迫られれば、市場にとって大きな逆風になる。これは金融システムから流動性を吸い取るのと同じことだ」と指摘する。

トランプ氏が2025年4月に追加関税を発表した際には、見通しの不透明さから投資家が安全資産へ逃避。S&P総合500種株価指数は約5%下落し、米国債利回りも当初は急低下した。ただ、その後株式市場は持ち直し、25年に何度か史上最高値を更新して、通年の上昇率は16%超に達した。

<当初は株に追い風か>

投資家の一部は、最高裁が関税の返還を命じれば株価は反発し、とりわけ高い輸入コストを負担してきた企業は株価が目立って上昇すると予想している。返金を命じる判決が下れば企業の収益が押し上げられ、輸入業者に今後数カ月で1500億─2000億ドルの資金が流入するとの試​算もある。

BNYマーケッツの米州マクロ戦略責任者ジョン・ベリス氏は「株式全般はおそらく恩恵を受ける。⁠特に小売りや消費財セクターは恩恵が大きい。電子機器セクターにも追い風だろう」と話す。

一部のアドバイザーはすでに小型株に資金‍を投じている。連邦準備理事会(FRB)が10年物国債利回りを抑え込み、流動性の注入で経済成長を促すとの見方からだ。

KEYアドバイザーズのガブール氏は12月中旬に小型株に4%の資金を割り当てた。「これ以上強気な材料はない。こうした小規模企業がさらに関税軽減を受ければ火にロケット燃料を注ぐようなものだ」と期待をかける。

小型株で構成されるラッセル2000指数は昨年の上昇率が11.3%で、今年に入ってからもすでに4%上昇している。

一方、投資家の間には、最高裁判断後の株式市場の反‍応は短命に終わるのではないかとの見方もある。仮に関税が無効とされても、トランプ政権はすぐに別の法的手段を用い‍て課税を再‌導入する可能性があるという。

ツイン・フォーカス・キャピタルのマネージングパートナーのジョン・パン‍タキディス氏は「短期的には、これはノイズに過ぎない。市場は大統領がさらなる関税をちらかせる姿勢を崩していないことを無視している」と述べた。

野村の先進国市場チーフエコノミストのデービッド・サイフ氏は、トランプ氏は最大15%の関税を課すことができる別の5つの法的ルートを使う可能性があり、「26年末までには、ほぼ現在と同じような関税体制になるのは確実だ」とみる。

<財政に影響か>

関税が引き下げられ、政府歳入が減少する可能性が生じれば、国債に圧力がかかり利回りが上昇する可⁠能性がある。高利回りで投資家の需要が債券に移れば、株式にとっては逆風だ。

トランプ氏は、関税政策が覆されれば「経済的な大惨事」になると述べている。課税の影響を受けた企業が政府から返金を受ける権利があるかどうかは明らかで⁠はない。

オセイクのチーフ・マーケット・ストラテジスト、フィル・ブラ‍ンカート氏は、返金を命じる判決が出れば米国債の発行が増えそうだとみている。

JPモルガンは、政権がより低い税率を課す法的代替手段に軸足を移すことで、年関税収入が約3500億から約2500億ドルに減少し、財政見通しへの懸念が再燃するとしている。

賭けサイトでは政権は敗北するとの予想が多い。例​えばポリマーケットのあるユーザーは、最高裁の判決に連動する約5万ドル相当のポジションを積み上げており、関税が無効との判断が出れば多額の利益を得る見込みだ。

一方、最高裁がトランプ関税を支持した場合には市場で再び売りが広がりそうだ。トランプ氏が関税を「脅し」に使うことが認められ、投資家の間で先行き不透明感が広がれば市場は動揺すると、F/mインベストメンツのアレックス・モリス最高投資責任者(CIO)は指摘した。

ロイター
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