コラム

日本も韓国も、父親が「育休」を取りにくい最大の原因は同じだった

2021年06月24日(木)17時37分
李 娜兀(リ・ナオル)
子供を抱っこする男性(イメージ画像)

D3SIGNーMOMENT/GETTY IMAGES

<制度の整備は進んでいるが、特に日本で取得する男性はごくわずか。大事な要素は「楽しさ」ではないか>

先日、男性の育児休業の取得を促す「改正育児・介護休業法」が成立した、というニュースを読みながら、「えっ」と驚いてしまった。

今回の改正のポイントは男性の休暇取得を積極的に促すように企業に義務付けることだそうだが、そもそも法律的に男性も育児休業を取りやすくなったのは2009年からだったらしい。次女が生まれたのは11年だったのに、私は全く知らなかった。

夫に問いただすと、制度についてよく分かっていなかったという。知っていたら利用したと思うか、と聞いてみると、「どうせ自分が休んでもあんまり役に立たなかったはずだ」と答える。

夫はいわゆる団塊ジュニア世代だが、この世代の問題なのか、夫の意識が特に低いのか。日本の制度については、私より日本人である夫のほうが早く詳しく知るべきで、貴重な機会を失ったのは夫の責任だ、とひとしきり言った。

この一件で興味を持ち調べてみると、日本政府は10年から「イクメンプロジェクト」を始め、男性が家事や育児に共に参加するためのワーク・ライフ・バランスの取り組みをアピールしていた。ただ、そこから10年たった昨年、厚生労働省が公表した19年度の男性の育児休業取得率は、ここ数年で増えているものの7.48%にとどまっている。

夫のように知らなかった、あるいは知っていても取得しなかった日本の男性が圧倒的多数ということだ。厚生労働省は、この数値を25年度には30%に上げることを目標にしているという。

韓国も男性の育児休業取得率を上げるために四苦八苦してきた。08年に民間企業で育児休業を取得した2万9145人のうち、男性はわずか355人で1.2%にすぎなかった。

韓国政府は14年からワーク・ライフ・バランスに重点を置く政策を打ち出し始め、その結果、この比率が18年には17.8%、20年には24.5%まで上がってきている。実数でいうと2万7423人なので、08年の355人と比較すると急増ぶりが分かる。

韓国では急増の理由を14年に始まった「パパ育児休業ボーナス制度」で説明することが多い。手当を除いた3カ月分の給与額100%が育児休業を取った男性に支払われる。

韓国内の14年の調査で、男性が育児休暇取得をためらう最大の理由が「所得の減少」だったというデータもあり、こうした問題が一定程度、解消されたことで取得者数が急増したようだ。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米連邦地裁、H─1Bビザ巡る商工会議所の訴え退ける

ワールド

米東部の高齢者施設で爆発、2人死亡 ガス漏れか

ビジネス

午前の日経平均は続伸も値幅限定、クリスマス休暇で手

ビジネス

歳出最大122.3兆円で最終調整、新規国債は29.
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 7
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 8
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story