コラム

求人はあるのに雇いたい人がいない 「欲しがられる人」に必須のスキルは明らかだ

2021年06月04日(金)12時56分
石野シャハラン
日本のサラリーマン(イメージ)

ISSEI KATOーREUTERS

<コロナ禍で失業する人がいる一方、適切な人材が集められない売り手市場の職種も。雇用のミスマッチが拡大する日本>

コロナ禍はなかなか収まらず、職を失い生活に困窮する人のニュースが後を絶たない。心が痛む状況である。だが驚くことに、この状況でも引っぱりだこのキャリアの人もいることを、皆さんはご存じだろうか。

私の友人は日本で15年近いキャリアを持つ外国人で、主に金融機関でコンプライアンス(法令遵守)関係の仕事をしてきた。その人はヘッドハンターから転職の誘いを受け続けている。

そのヘッドハンターいわく、英語でその仕事ができる人財(私はあえてこの言葉を使う)が極端に不足していて、複数の会社から計40ものポジションで募集がある。それなのに紹介できる人財は5人程度しかおらず、頭を抱えているそうだ。

詳しく話を聞くと、2011年の東日本大震災から英語を使える人財が減り続けていて、ポジションはあるのに紹介できる人財がいない、いても完全に売り手市場で給与水準が高過ぎて雇えない、という職種が多いという。

そのため、日本の平均的な賃金は相対的に下落し続けているにもかかわらず、外資系企業にとって日本はいまだに「ハイコスト・ロケーション」(賃金が高い国)であり、そうした企業が日本支社を縮小・撤退する原因の1つにもなっている。

働く人を育ててこなかったツケ

一方では職を失い日々の生活にも困る人、他方では募集しても人財が集められない売り手市場の職種がある。日本の労働市場のミスマッチはどんどん広がっているのだ。

日本はバブル崩壊以降、働く人を大事に育ててこなかった。企業は経費を削減し利益を最大化するため、社員が担ってきた仕事を非正規社員にさせ、若者をアルバイトとして安く雇用し、社会保障と十分な職業教育を与えてこなかった。

この30年間、できる限り多くのIT人財を育成するべきだったのに、そうはしなかった。高度な知識やスキルを求められない仕事をさせるのであれば、それでもよかったのかもしれない。

例えば飲食店や小売店での接客、物流拠点での荷物ピッキング作業、役所・銀行・交通機関での窓口対応、オフィスの清掃、単純な入力作業、今ではまだ数え切れないくらいある、そういう仕事だ。日本でこれらの仕事をしている人たちは素晴らしい。皆礼儀正しく感じがよく、丁寧な仕事ぶりで、それこそが私の好きな日本である。

だが、そういった仕事が今後も必要とされるか? 答えは残念ながら否である。

プロフィール

外国人リレーコラム

・石野シャハラン(異文化コミュニケーションアドバイザー)
・西村カリン(ジャーナリスト)
・周 来友(ジャーナリスト・タレント)
・李 娜兀(国際交流コーディネーター・通訳)
・トニー・ラズロ(ジャーナリスト)
・ティムラズ・レジャバ(駐日ジョージア大使)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

対カナダ関税10%引き上げ、トランプ氏 「虚偽」広

ビジネス

アングル:自動車業界がレアアース確保に躍起、中国の

ワールド

アングル:特産品は高麗人参、米中貿易戦争がウィスコ

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 10
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story