コラム

ヨーロッパのデジタルノマドワーカーが実践する「非同期ワーク」とは?

2021年05月11日(火)18時00分

欧州のデジタル・ノマド拠点

今、欧州各地の都市で、リモートワーカーやノマドワーカーを積極的に受け入れ、スタートアップ経済を加速させようという取り組みが盛んである。欧州の魅力的なデジタル・ノマドの新拠点は、増え続けるフリーランサーやリモートワーカーのために、すでにその扉を開いている。

現在、世界中に1億5,000万人のリモートワーカーがいて、推定2,500万人のノマドワーカーが母国を離れ海外に住んでいる。すべてのリモートワーカーは、2035年までに10億人に達するという予測もある。

このような状況を考えると、2022年以降は、デジタル・ノマドが活躍する時代になると予測される。将来のデジタル・ノマドに最適な場所にはいくつかの要件がある。ビザ取得の簡易さや治安の良さ、安価な生活費、インターネットの速度、天候、コミュニティ、食事や街の文化、やるべきことに適した場所など、すべてのノマド候補者は下調べをして、自分に合った場所を決める必要がある。

デジタル・ノマドのための魅力的な欧州のホットスポットとして注目されている都市には、世界中の才能を呼び込むためのインセンティブが用意されている。中でもジョージア(旧グルジア)のトビリシ、エストニアのタリン、リトアニアのヴィリニュス、クロアチアのスプリット、セルビアのベオグラードなどは、EUのみならず、世界各地からのデジタル・ノマドに人気だ。これらの都市の大半は、旧ソビエト圏の都市であり、ベルリンともつながりがある。

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デジタル・ノマドのためのホットスポットとして注目されているジョージア(旧グルジア)の首都トビリシ。最も有名なランドマークが「平和の橋」。トビリシは、シルクロードの中継点で、訪問客をもてなす文化が成熟してきた。世界ではじめてワインを生産した土地で、温泉も有名。ベルリンをはじめ、欧州の主要都市から直行便が飛んでいて、世界のノマドワーカーをひきつけている。

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トビリシにあるデジタル・ノマドの集合拠点である多機能文化センター「ファブリカ(Fabrika)」。コワーキングスペースやテック系ハブ、レストラン、アートショップ、ホステルなど、デジタル・ノマドたちが求めるすべてのインフラが整っている。

次のフロンティアへ

今、非同期型の仕事を求める声は、数年前にリモートワークを求めた人々と同じ段階にある。ほとんどの人は、非同期の仕事が標準になるとは思っていない。しかし、ベルリンをはじめ、欧州の都市をみれば、スマートなリモートワーカーの多くが、非同期の生き方を選択していることも事実である。

非同期のワークスタイルや、さまざまな都市に住むノマドワーカーの生き方を、すべての人が納得するために、パンデミックは大きなきっかけをもたらしている。

非同期ワークをデフォルトにするための活動は、すでに始まっている。なぜなら、それは何百万人、何億人もの人々の生活の質を向上させる社会変革につながるからだ。現状、リモートワークの増加が多くの人に恩恵を与えているように、非同期のワークスタイルが次の働き方改革なのかもしれない。

プロフィール

武邑光裕

メディア美学者、「武邑塾」塾長。Center for the Study of Digital Lifeフェロー。日本大学芸術学部、京都造形芸術大学、東京大学大学院、札幌市立大学で教授職を歴任。インターネットの黎明期から現代のソーシャルメディア、AIにいたるまで、デジタル社会環境を研究。2013年より武邑塾を主宰。著書『記憶のゆくたて―デジタル・アーカイヴの文化経済』(東京大学出版会)で、第19回電気通信普及財団テレコム社会科学賞を受賞。このほか『さよならインターネット GDPRはネットとデータをどう変えるのか』(ダイヤモンド社)、『ベルリン・都市・未来』(太田出版)などがある。新著は『プライバシー・パラドックス データ監視社会と「わたし」の再発明』(黒鳥社)。現在ベルリン在住。

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