<トランプがアジアへ軸足を移し、米中「新冷戦」が現実味を帯びてきた。揺らぐ中国の軍事と経済に勝機はあるのか>


▼目次
1.米中対決、舞台はすでに整った
2.中国軍の実力、虚像と現実
3.周辺国の協力なき中国の限界
4.アテネとスパルタが示す歴史の教訓

1.米中対決、舞台はすでに整った

今年6月22日、米軍の地中貫通爆弾「バンカーバスター」がイランの核施設を攻撃した25分間に、醜くも恒常的だった中東の地政学的風景は大きく変わった。

互いを最大の仇敵と見なしてきたイランとイスラエルが、圧力を受けて和平交渉のテーブルに着くことで合意したのだ。

圧力をかけたのはドナルド・トランプ米大統領。批判派からは「孤立主義者」とも呼ばれてきた人物だ。

しかし、トランプが状況を変化させた地域は中東だけではない。

第1次政権では、欧州諸国のあらゆる指導者をいら立たせた。ロシアの侵略に備え、GDPの2%を防衛費に充てるよう求めたからだ。

第2次政権になってトランプは欧州にもっと大きな防衛費負担を求め、関係はさらに悪化した。だが、最終的には欧州側が折れた。

6月のNATO首脳会議では、2035年までにGDPの5%を国防・安全保障に充てることが合意されている。

この仕事に区切りがついたことで、トランプは本格的にアジアに軸足を移し、対峙する中国への対応に乗り出そうとしている。ビル・クリントン以降、歴代の米大統領が口にしながら実現しなかった戦略転換だ。

既にその兆しは、7月4日に成立したトランプ主導の予算調整案「ワン・ビッグ・ビューティフル法案(OBBBA)」に表れている。

法案の第2編には、今年度の防衛費の増額が盛り込まれた。太平洋地域の抑止力強化に120億ドルが割かれ、そのうち8億7000万ドルが台湾防衛に向けられる。

アジアにとっては関税の集中砲火と並んで、トランプ時代の到来を告げる最初の具体的政策だろう。

中国はこうした動きを苦々しい思いで見つめているはずだ。

中国の共産党メディアが長年流布してきた政治的スローガンは「東昇西降(東側は発展し西側は衰退する)」と「中治西乱(中国は治められ西側は乱れる)」の8文字。

中国はこの「神話」をまるで現実的な戦略分析であるかのように見なし、それに基づいて拡張政策を取ってきた。

こうして、米中直接対決の舞台は整った。

中国軍の実力、虚像と現実

中国は空母「山東」を含む空母打撃群を編成するなど海軍力を増強する
中国は空母「山東」を含む空母打撃群を編成するなど海軍力を増強する ORIENTAL IMAGE―REUTERS

トランプは中国に対し、「力による抑止」を行うと明言している。ロナルド・レーガン元大統領が用いた手法で、トランプの対イラン攻撃で再び表舞台に登場した。

対する中国の習近平(シー・チンピン)国家主席はどのような戦略を取るのか。それは冷戦の激化、あるいは「熱戦」の勃発につながるのか。もし熱い戦いが起きた場合、中国は勝利して台湾を手に入れられるのか。

その答えは、中国の近隣諸国を安心させるものになるだろう。

習は軍備に巨費を投じ、「27年に台湾を解放する」という計画に沿って人民解放軍を鍛え直そうとしている。しかし、中国が本格的な戦争に勝利するのは非現実的な目標だ。

中国は主要経済国で唯一、コロナ禍から回復していない。

「人口ボーナス期」(出生率の低下により総人口に占める生産年齢人口の割合が上昇し、経済成長が促進される時期)は終わり、しかも「中所得国の罠」(1人当たりGDPが中所得に達した後、経済構造の転換が進まず成長率が伸び悩むこと)を突破できなかった。

IT分野に重点的に投資したが、巨額の補助金を流用し私腹を肥やした開発者もいる一方で、半導体業界は技術的な壁にぶつかっている。

軍の状況はさらに目を覆う。

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【note限定公開記事】トランプが描く「新冷戦」...米国の戦略と限界見え始めた中国の力


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