最新記事
米中関係

トランプが描く「新冷戦」...米国の戦略と限界見え始めた中国の力【note限定公開記事】

CAN CHINA TAKE TAIWAN?

2025年8月20日(水)08時05分
練乙錚(リアン・イーゼン、経済学者)
中国のアモイの近く、台湾・金門島の海岸に残る上陸阻止の「忍び返し」

台湾・金門島の海岸に残る上陸阻止の「忍び返し」。中国のアモイはほんの2キロ先だ ANN WANGーREUTERS

<トランプがアジアへ軸足を移し、米中「新冷戦」が現実味を帯びてきた。揺らぐ中国の軍事と経済に勝機はあるのか>


▼目次
1.米中対決、舞台はすでに整った
2.中国軍の実力、虚像と現実
3.周辺国の協力なき中国の限界
4.アテネとスパルタが示す歴史の教訓

1.米中対決、舞台はすでに整った

今年6月22日、米軍の地中貫通爆弾「バンカーバスター」がイランの核施設を攻撃した25分間に、醜くも恒常的だった中東の地政学的風景は大きく変わった。

互いを最大の仇敵と見なしてきたイランとイスラエルが、圧力を受けて和平交渉のテーブルに着くことで合意したのだ。

圧力をかけたのはドナルド・トランプ米大統領。批判派からは「孤立主義者」とも呼ばれてきた人物だ。

しかし、トランプが状況を変化させた地域は中東だけではない。

第1次政権では、欧州諸国のあらゆる指導者をいら立たせた。ロシアの侵略に備え、GDPの2%を防衛費に充てるよう求めたからだ。

第2次政権になってトランプは欧州にもっと大きな防衛費負担を求め、関係はさらに悪化した。だが、最終的には欧州側が折れた。

6月のNATO首脳会議では、2035年までにGDPの5%を国防・安全保障に充てることが合意されている。

この仕事に区切りがついたことで、トランプは本格的にアジアに軸足を移し、対峙する中国への対応に乗り出そうとしている。ビル・クリントン以降、歴代の米大統領が口にしながら実現しなかった戦略転換だ。

既にその兆しは、7月4日に成立したトランプ主導の予算調整案「ワン・ビッグ・ビューティフル法案(OBBBA)」に表れている。

法案の第2編には、今年度の防衛費の増額が盛り込まれた。太平洋地域の抑止力強化に120億ドルが割かれ、そのうち8億7000万ドルが台湾防衛に向けられる。

アジアにとっては関税の集中砲火と並んで、トランプ時代の到来を告げる最初の具体的政策だろう。

中国はこうした動きを苦々しい思いで見つめているはずだ。

中国の共産党メディアが長年流布してきた政治的スローガンは「東昇西降(東側は発展し西側は衰退する)」と「中治西乱(中国は治められ西側は乱れる)」の8文字。

中国はこの「神話」をまるで現実的な戦略分析であるかのように見なし、それに基づいて拡張政策を取ってきた。

こうして、米中直接対決の舞台は整った。

中国軍の実力、虚像と現実

中国は空母「山東」を含む空母打撃群を編成するなど海軍力を増強する

中国は空母「山東」を含む空母打撃群を編成するなど海軍力を増強する ORIENTAL IMAGE―REUTERS

トランプは中国に対し、「力による抑止」を行うと明言している。ロナルド・レーガン元大統領が用いた手法で、トランプの対イラン攻撃で再び表舞台に登場した。

対する中国の習近平(シー・チンピン)国家主席はどのような戦略を取るのか。それは冷戦の激化、あるいは「熱戦」の勃発につながるのか。もし熱い戦いが起きた場合、中国は勝利して台湾を手に入れられるのか。

その答えは、中国の近隣諸国を安心させるものになるだろう。

習は軍備に巨費を投じ、「27年に台湾を解放する」という計画に沿って人民解放軍を鍛え直そうとしている。しかし、中国が本格的な戦争に勝利するのは非現実的な目標だ。

中国は主要経済国で唯一、コロナ禍から回復していない。

「人口ボーナス期」(出生率の低下により総人口に占める生産年齢人口の割合が上昇し、経済成長が促進される時期)は終わり、しかも「中所得国の罠」(1人当たりGDPが中所得に達した後、経済構造の転換が進まず成長率が伸び悩むこと)を突破できなかった。

IT分野に重点的に投資したが、巨額の補助金を流用し私腹を肥やした開発者もいる一方で、半導体業界は技術的な壁にぶつかっている。

軍の状況はさらに目を覆う。

記事の続きはメディアプラットフォーム「note」のニューズウィーク日本版公式アカウントで公開しています。

【note限定公開記事】トランプが描く「新冷戦」...米国の戦略と限界見え始めた中国の力


ニューズウィーク日本版「note」公式アカウント開設のお知らせ

公式サイトで日々公開している無料記事とは異なり、noteでは定期購読会員向けにより選び抜いた国際記事を安定して、継続的に届けていく仕組みを整えています。翻訳記事についても、速報性よりも「読んで深く理解できること」に重きを置いたラインナップを選定。一人でも多くの方に、時間をかけて読む価値のある国際情報を、信頼できる形でお届けしたいと考えています。

ニューズウィーク日本版 トランプのイラン攻撃
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2026年3月10号(3月3日発売)は「トランプのイラン攻撃」特集。核・ミサイル開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。アメリカとイランの全面戦争は始まるのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米労働生産性、第4四半期は2.8%上昇 伸び鈍化も

ビジネス

米新規失業保険申請件数は横ばいの21.3万件、労働

ワールド

トランプ大統領、イラン次期指導者の選出に「関与する

ビジネス

EXCLUSIVE-NATO、集団的自衛権行使の協
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプのイラン攻撃
特集:トランプのイラン攻撃
2026年3月10日号(3/ 3発売)

核開発の断念を迫るトランプ政権が攻撃を開始。イランとアメリカの本格戦争は始まるのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで続くのか
  • 2
    「え、履いてない?」モルディブ行きの飛行機で撮影された、パイロットの「まさかの姿」にSNS爆笑
  • 3
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られる」衝撃映像にネット騒然
  • 4
    「イランはどこ?」2000人のアメリカ人が指差した場…
  • 5
    対イラン攻撃に巻き込まれ、湾岸諸国が存立危機
  • 6
    「ハリポタ俳優で終わりたくない」...ハリー・メリン…
  • 7
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
  • 8
    「巨大な水柱に飲み込まれる...」米海軍がインド洋で…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「旅客数が多い空港」ランキン…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 1
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビザの壁、会社都合の解雇、帰国後も続く苦境
  • 2
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズった理由
  • 3
    BTS復活...でも、韓国エンタメが「苦境」に陥っている
  • 4
    イラン猛反撃、同士討ちまで起きる防空戦はいつまで…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    中国、4隻目の空母は原子力艦か──世界3番目の原子力…
  • 7
    「毎日が人生最後の日」だと思って酒を飲む...84歳医…
  • 8
    サファリ中の女性に悲劇...ライオンに「くわえ去られ…
  • 9
    少子化に悩む韓国で出生率回復...昨年過去最大の伸び…
  • 10
    「死体を運んでる...」Google Earthで表示される「不…
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    台湾侵攻「失敗」の大きすぎる代償
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 7
    「ヘル・コリア」から日本へ7万人 ── 大企業の高給より…
  • 8
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 9
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 10
    命は長し、働け女たち――88歳「働くばあさん」が説く…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中