最新記事

米中関係

米中対立、SNSではもはや「戦闘状態」 南シナ海めぐる「口撃」激化

2020年7月26日(日)18時25分

南シナ海をめぐる米中間の緊張が、ソーシャルメディア上で「言葉の戦争」を引き起こしている。写真は2019年7月、上海で撮影(2020年 ロイター/Aly Song)

南シナ海をめぐる米中間の緊張が、ソーシャルメディア上で「言葉の戦争」を引き起こしている。

中国が東南アジア地域で米に対抗する超大国として台頭する中、アナリストらは米国の戦略に変化が現れている、と捉えている。

先週、米国政府が南シナ海における中国の海洋領有権の主張をはっきりと退け、一段と強い態度を示したことを受けて、東南アジア諸国にある米国の各大使館は、かつてないほどのペースで中国政府の姿勢を批判する論説や声明を発表している。

中国側も激しい反応を見せ、「(東南アジア地域において)人々に誤解を与えるよう虚偽の文言を用いて中国の名誉を傷つけている」と米国政府を批判した。

いまや戦場、長いゲームに

アルベルト・デル・ロザリオ戦略国際関係研究所(フィリピン)のアナリスト、レナト・デ・カストロ氏はロイターとの電話インタビューのなかで、「この地域はいまや戦場になっている」と語った。「長いゲームになるだろう」

1週間前、マイク・ポンペオ米国務長官は、豊かなエネルギー資源が期待される南シナ海の約90%について中国政府が領有権を主張していることについて、「完全に違法」であり、中国政府が「海洋帝国をめざしている」と批判した。

タイ、マレーシア、フィリピン、カンボジアに置かれた米国大使館はこれを受けて、フェイスブックへの投稿や地元報道メディアへの寄稿を通じて、中国政府の行動は他国の主権を侵害するパターンを繰り返していると述べた。

駐タイ米国大使は、昨夏の干ばつの際、中国国内のダムが放流しなかったことで、東南アジア地域を流れるメコン川の流量が失われたと批判している。

ヤンゴンに置かれた在ミャンマー米国大使館は、南シナ海の状況と「中国によるミャンマーへの干渉」は類似しているとして、いわゆる「債務の罠」になりかねない投資や、婚姻を名目としたミャンマー女性の中国への拉致、ミャンマーへの薬物流入を指摘した。

こうした動きに対し、駐タイ中国大使はすばやく反撃し、米国政府は「中国と他の南シナ海沿岸諸国のあいだに不和の種をまこうとしている」と批判した。

在ミャンマー中国大使館はフェイスブックへの投稿のなかで米国について「ダーティ(汚い)」という表現を2回使い、米国の在外機関が中国を封じ込めるために「非常に不快な行動」をとっており、「利己的かつ偽善的で、軽蔑すべき醜い顔」を見せている、と非難した。

こうした声明に対して域内のソーシャルメディアで数千件ものコメントが寄せられている。多くは中国を批判する内容だが、米中両国の動機も疑問視する投稿もある。

在フィリピン米国大使館によるフェイスブック投稿に対し、シェリー・オカンポと名乗るユーザーは、「米国が法の求める行動を取ってくれてありがたい」とコメントした。

在マレーシア米国大使館のページに書き込まれた「帝国主義ヤンキーは国に帰れ!」との匿名の投稿に対し、米国の外交当局者は、「南シナ海で中国が傍若無人に振る舞っても構わないということか」と反論した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

グアテマラ刑務所で暴動、刑務官ら一時人質 治安非常

ビジネス

新発10年債利回り2.24%に上昇、27年ぶり高水

ビジネス

25年の中国GDPは5.0%で政府目標達成:識者は

ビジネス

中国GDP伸び率、第4四半期は3年ぶり低水準 通年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 2
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 5
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 7
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 10
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中