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チベット問題

次の「ダライ・ラマ15世」が地政学リスクに? チベット人が語る、中国からの干渉を防ぐ方法とは

Who Will Decide the Next Dalai Lama?

2025年7月8日(火)14時25分
ケルサン・オーカサン(チベット人、米アトランティック・カウンシル客員上級研究員)

ダライ・ラマがインド国籍なら、インド政府に対し、チベット人の自決権を支持する姿勢をより鮮明に打ち出すよう迫る可能性がある。インドは長年にわたり、ダライ・ラマとその亡命政権(中央チベット政府)、そして約8万5000のチベット難民を受け入れ、保護してきた。その一方、外交的にはチベットを中国の一部と認め、自国内でのあからさまな反中政治活動を禁止している。ダライ・ラマ14世の後継者問題についても、インド政府は意図的に沈黙を保っている。

モンゴルとネパール(どちらも経済面で中国に依存している)も苦しい。もしも自国内でダライ・ラマの化身(後継者)が見つかり、中国側の認定した後継者と対立した場合、中国から強烈な圧力がかかるのは必至だ。


実際、モンゴル政府は既に苦い経験をしている。16年にダライ・ラマ14世の訪問を受け入れた際、中国側は国境の閉鎖と外交関係の凍結という強硬措置を取った。

アメリカも無関心ではいられない。1期目のトランプ政権で成立した「チベット政策支援法」によれば、ダライ・ラマの後継者選びに介入した「中国政府または中国共産党の高官にはしかるべき制裁を科す」ことになっている。

もちろんトランプ政権の出方は予測し難い。しかし中国側が勝手に決めた次期ダライ・ラマの承認を拒絶または保留する可能性はある。そうなれば、ただでさえ一触即発の米中関係は一段と悪化することになる。

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