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水源独占、資源乱掘、先住民迫害...中国のチベット高原「破壊」がアジア全域に及ぼす影響とは

CATASTROPHE ON THE ROOF OF THE WORLD

2025年6月10日(火)14時35分
ブラマ・チェラニ(インド政策研究センター教授)
中国がチベット高原に相次いで建設したダムの1つ

中国がチベット高原に相次いで建設したダムの1つ GO NAKAMURAーREUTERS

<世界第3の淡水貯蔵地であり、アジアの主要な10河川の水源にもなっているチベット高原。周辺国を顧みない中国の開発によって周辺国はあおりを食っている>

チベット高原には広大な氷河が広がっている。北極と南極を除けば、ここは世界最大の淡水の貯蔵地だ。この地は、アジアの主要な10の河川の水源でもある。中国の黄河と長江、東南アジアのメコン川、サルウィン川、エーヤワディー川(イラワジ川)、南アジアのインダス川、ブラマプトラ川......。これらの河川は、世界人口の約20%に水を供給している。

そしてこの地域は今、アジア全域の水の安全保障や生態系の均衡、地政学的安定を脅かし、じわじわと進行する環境災害の現場となった。


中国は過去20年以上にわたり、チベット高原を中心に大規模なダム建設を進めている。中国は下流域の国々と水資源を共有する協定の締結を拒み続けており、下流域諸国はそのあおりを食っている。

チベット高原に近い場所に中国が建設した巨大ダムの影響で、メコン川の水位は記録的な低水準に下がり、カンボジアやラオス、タイ、ベトナム全域で漁業や生計手段に深刻な被害が出ている。ベトナム南部のメコンデルタが後退しているのも、中国のダムが一因だ。稲作を営んできた農民は、エビの養殖やアシの栽培に転向している。

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