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チベット問題

次の「ダライ・ラマ15世」が地政学リスクに? チベット人が語る、中国からの干渉を防ぐ方法とは

Who Will Decide the Next Dalai Lama?

2025年7月8日(火)14時25分
ケルサン・オーカサン(チベット人、米アトランティック・カウンシル客員上級研究員)

しかし中国共産党は23年に、「ダライ・ラマとパンチェン・ラマの化身は国内で探し、金瓶のくじ引きで決め、中央政府の承認を得なければならない」と宣言している。

中国政府の姿勢は一貫して強硬だ。1995年にはチベット仏教第2位の高僧パンチェン・ラマ10世の後継者選定に当たり、チベット側が化身と認定した当時6歳の少年とその家族を拉致し、別の人物をパンチェン・ラマ11世の地位に据えている。30年後の今も、拉致された少年の所在や生死は不明なままだ。


地政学的にも大きな影響

こうした前例がある以上、ダライ・ラマ14世の後継者選びに当たっても中国政府は強引に介入し、その選択を受け入れるようチベット人に、そして諸外国に圧力をかける可能性が高い。

台湾に関する「一つの中国」政策と同様、中国が指名したダライ・ラマのみを承認する「一人のダライ・ラマ」政策に従え。中国側は他国にそう要求するだろう。それが国際社会で認められれば、習近平国家主席にとっては願ってもない成果となる。チベットに対する統治の正統性を確立するという長年の夢がかなうからだ。

ダライ・ラマの後継者問題は地政学的にも大きな意味を持つ。もしも次のダライ・ラマがインド生まれでインド国籍だったらどうなるか。既に緊張状態にあるインドと中国の関係は一段と複雑なものになるだろう。

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