ISが狙う「イラン弱体化の隙」──混乱に乗じて広がる新たな脅威

A RENEWED ISIS THREAT

2025年7月2日(水)10時41分
トム・オコナー(外交問題担当シニアライター)
ISが狙う「イラン弱体化の隙」──混乱に乗じて広がる新たな脅威

ISは弱体化したイランでの活動を活発化させている(写真は2015年) UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY IMAGES

<過激派組織イスラム国(IS)がイランとイスラエルの対立の裏で、静かに復活の足場を築いている。対テロ戦争は終わっていない>

イランでは引き続き不穏な状況が続いている。その理由は、ドナルド・トランプ米大統領がイランとイスラエルの停戦を突然発表したことだけではない。イランにとってもう1つの敵対勢力が、ひそかに動き出しているためだ。

その勢力とは過激派組織「イスラム国」(IS)。イランの東隣と西隣で活動してきたISは、いまイラン国内でも活動を活発化させている。昨年1月には、イラン南東部ケルマンでの自爆攻撃に対する犯行声明を出した。犠牲者はイラン革命後の事件で最多となった。


イラン当局は今年6月、イスラエルによる大規模攻撃に先立ち、ISメンバーとされる13人の逮捕と9人の処刑を発表している。

イスラエルとの交戦で国家機関や軍事施設、政府・軍関係者が標的にされ、イランの治安部隊はかつてない危機に見舞われている。混乱に乗じて、不満分子のいる社会に入り込むことを得意とするISにとっては、絶好のチャンスだ。

ISの歴史は、アメリカの中東への軍事介入と密接に関係している。イスラム教スンニ派の過激派組織であるISは、イラクの国際テロ組織アルカイダから派生した。

2003年春にアメリカ主導の多国籍軍がイラクに侵攻し、サダム・フセイン政権を打倒した後、アルカイダは米軍および対立するシーア派武装勢力への熾烈な闘争を開始した。

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