ISが狙う「イラン弱体化の隙」──混乱に乗じて広がる新たな脅威
A RENEWED ISIS THREAT
イランは80年代に、フセイン政権下のイラクと8年間に及ぶ戦争を続けた。イランにとってフセイン政権の崩壊は、同じイスラム教シーア派の国であるイラクに武装勢力を送り込み、自国の影響力を拡大する好機となった。同時にイランは大きなリスクも被った。
その後の政情不安によって超原理主義勢力のイラク・アルカイダ機構(AQI)、後のイラク・イスラム国の台頭を招いたのだ。
アメリカとイランは宿敵の関係にあった。だがISが台頭し始めた14年には、イラクと隣国シリアで進撃していたISに対する掃討作戦で共闘した。アメリカは国際的な有志連合を結成。イランはガセム・ソレイマニ司令官らを現地に送り込んだ。
イランが支援する武装組織のネットワーク「抵抗の枢軸」には、レバノン、イラク、シリア、イエメン、さらにアフガニスタンやパキスタンの組織が含まれる。
専門家の間には、11年12月に米軍がイラクから撤退した際に起きたように、宗派間の緊張が高まり、ジハード(聖戦)が再燃するのではないかという懸念がある。
「隙間が生じれば、必ず何かで埋められる」と、ニューラインズ研究所(ワシントン)のシニアディレクター、カムラン・ボカリは言う。「イランの力が弱まり、国内の治安維持力が低下すれば、ISにとっては間隙を突くチャンスとなる」