適切な保険料はいくら?...「86歳で死ぬ」想定、世界初の「科学的な」保険システムを作った「ある計算式」とは?
モアブルが示した「死亡率」の計算法
モアブルは、まず若者と高齢者の不公平さをなくすために次のような「ド・モアブルの法則」を打ち立てた。
この死亡率の式のχに、年齢を10歳おきにあてはめると次のような死亡率となる。
年齢が高くなるほど死亡率が急に高くなっているのがわかるだろう。モアブルはこの死亡率に応じて各年齢における保険料を設定し、若者の保険料の負担を減らした。
また、モアブルは旧来の保険商品にあったもう1つの問題点を解決へと向かわせた。
それは「理論上の死亡率と実際の死亡率の誤差の評価」である。この問題を解決するには、ある法則が必要とされた。
「理論上の確率」と「実際の確率」の誤差を評価する法則がある。
モアブルよりも少し前、スイスのヤコブ・ベルヌーイという数学者が研究した「大数の法則」というものだ。大数の法則とはデータ数が多くなるほど、理論上と実際の確率の誤差が縮まるという法則である。
この法則によると、「千人の加入者による保険商品」と「1万人の加入者による保険商品」では、後者のほうが死亡率の理論値と実測値の誤差が小さくなり、安定した保険制度につながる。