歴史が警告する関税の罠──トランプ政策が招く「世界恐慌」の再来

A LESSON IN HISTORY

2025年5月22日(木)16時55分
スコット・レイノルズ・ネルソン(米ジョージア大学歴史学部教授)

スムート・ホーリー法の大恐慌

1930年のスムート・ホーリー法は大恐慌を悪化させ、米連邦議会議事堂前は援助を求める失業者であふれた BETTMANN/GETTY IMAGES

それから10年足らずで、英米貿易戦争によってカリブ海地域のプランテーション経営コストは高騰。現地の奴隷所有者は母国イギリスに奴隷制を廃止するよう圧力をかけた(その前に奴隷解放に伴う補償金を支払うことを条件とした)。

17年に初めて可決されたさまざまな国際貿易規制はアメリカの穀物輸出を妨げ、綿花生産をさらに定着させ、米南部における奴隷制も定着させた。

アメリカの次なる不況を招いたのは、アンドリュー・ジャクソン第7代大統領(民主党)による国際貿易上の性急な行政措置だった。


1819年の恐慌以来、米南部の綿花農園拡大の資金は信用取引の連鎖によって賄われていた。(中央銀行の役割を果たしていた)第2合衆国銀行はイギリスの7つの銀行「セブン・シスターズ(7姉妹)」と共に英投資家から借り入れ、為替手形を発行して地方の小規模な銀行に融資。

銀行はその資金を奴隷商人に短期貸し付けし、奴隷商人はその資金でバージニア州とサウスカロライナ州の奴隷を買ってジョージア州、ミシシッピ州、ルイジアナ州の綿花農園に売るという具合だ。

金利はイングランド銀行(イギリスの中央銀行)が設定していたので、ロンドンの金利が少し上がれば、奴隷所有者はニューオーリンズで土地や奴隷を買えなくなる恐れがあった。

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