歴史が警告する関税の罠──トランプ政策が招く「世界恐慌」の再来
A LESSON IN HISTORY
第2合衆国銀行は1836年に特許更新が必要だったが、ジャクソンは更新を拒否し、34年と36年に奴隷所有者の英融資依存からの脱却を目指す大統領令に署名。政府資金の預託先を民主党系の州公認銀行に変更。農民が米土地管理局へのローン返済のために銀行から融資を受けることを禁じ、金貨での支払いを強制した。
ジョージア州とノースカロライナ州に金鉱を所有する南部の奴隷所有者は利益にあずかったが(カリフォルニア州ではまだ金が発見されていなかった)、金に対する突然の需要は供給を大幅に上回った。
イングランド銀行は自国の資金がアメリカに流出する状況を見て金利を引き上げ、7行の国際為替取引を一時停止した。かくして1837年の恐慌が始まった。
南部の大農園主は借金の取り立てから逃れるためプランテーションを放棄して当時独立国だったテキサス共和国に奴隷を運んだ。商店は畳まれ、メーカーは倒産した。その後5年間で7州が州債の償還不能に陥った。
次の恐慌は1873年に国際商品価格の急激な変化に続いて起きたが、性急な関税措置が原因ではなかった。だが93年の恐慌は違った。
米下院は90年に立法ルールを改正。議会の運営を効率化し、権限を強化した。勢いづいた共和党議員たちはマッキンリー関税法を成立させ、輸入品の平均関税率をそれまでの38%から50%近くまで引き上げる一方、当時アメリカが輸出する桃やサーモンや牛肉などの缶詰の防腐剤として使われていた粗製糖の関税を撤廃した。