歴史が警告する関税の罠──トランプ政策が招く「世界恐慌」の再来

A LESSON IN HISTORY

2025年5月22日(木)16時55分
スコット・レイノルズ・ネルソン(米ジョージア大学歴史学部教授)

綿花の袋を荷車に積み込む黒人労働者

イギリスの関税政策や禁輸措置を機にアメリカでは奴隷労働者による綿花栽培が定着。綿花の袋を荷車に積み込む黒人労働者(19世紀の木版画) ANN RONAN PICTURESーPRINT COLLECTOR/GETTY IMAGES

環境や労働に関する規制も、しばしば予期せぬ形でてんびんを傾ける。大国の独占企業は関税など、競争を阻害して自分たちを守り、貴重な資産の価値を増やすような規制を支持する傾向がある。

イギリスの植民地だったアメリカは長年、関税戦争においてとりわけ脆弱だった。イギリスは数世紀にわたり、植民地の貿易を本国の目的に合わせて形作った。

ニューヨーク、メリーランド、サウスカロライナといった植民地は、バージニアやカリブ海地域にある奴隷労働に依存したタバコと砂糖のプランテーション(植民地時代の大規模農園)に小麦と米を供給する役割を担った。


さらに、イギリスは植民地が自前で織物、鉄製品、紙を生産することを禁止した。こうした国際貿易に対する締め付けが次第に強化され、アメリカ独立戦争に至った。

1776年の独立後、アメリカ連合規約と合衆国憲法は、国際貿易を急激に、あるいは大幅に変えるような行政府の行為を制限しようとした。関税法などの歳入法案は下院に提出後、上院の承認が必要となり、大統領には拒否権だけを持たせた。

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