歴史が警告する関税の罠──トランプ政策が招く「世界恐慌」の再来
A LESSON IN HISTORY

自由貿易のてんびんを動かす
経済活動における最も強い力の1つは比較優位だ。
これは小麦の栽培や織物、ソフトウエアの開発など、自国が得意な分野の生産に特化してその財を輸出するという考え方で、自国の希少な資源を農民や鉱山労働者、製造業者が最も低コストで生産できるものに振り向ける。それぞれが自国の比較優位を生かして国際貿易を行うとき、理論上、全ての国が利益を得る。
この理論は実証されてきた。ヨーロッパ全土を襲ったジャガイモ飢饉の影響で、イギリスをはじめヨーロッパ諸国は1846年に食糧の自由貿易の導入を余儀なくされたが、それが予想外の繁栄をもたらした。
もちろん、それまで保護されていたグループの一部は打撃を受けた。
ヨーロッパの地主は、最も恩恵を受けているのはロシアとアメリカだと不満を募らせた。ロシア支配下のウクライナの肥沃な平原とアメリカ中西部であまりに安価に小麦を生産できたため、ヨーロッパの農地価格が下落したからだ。
また、自由貿易の波はイギリスとヨーロッパ大陸で農村部の貧困層を都市部に向かわせ、都市化と工業化の波が起きた。
言うまでもなく、中国やアメリカ、EUなど大規模で資源に恵まれた国や共同市場は、自由貿易のてんびんを自ら動かすことができる。為替レートを操作して自国の輸出を有利にしたり、補助金によって特定の産業を(例えば小麦よりトウモロコシを、繊維より半導体を、米より繊維を)優遇したりするのだ。
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