最新記事
ロシア

無節操なトランプが見落とすロシアの「新たな脆弱性」...今こそ強力な対ロ経済制裁の好機

Now Is the Time for Sanctions

2025年5月21日(水)14時30分
クリスチャン・カリル(本誌元モスクワ支局長)

政府が公表している年間インフレ率は10%強だが、実際はもっと高いと思われる。なぜ高インフレが続くのか。ウクライナ戦争を続けるために、ロシア政府がひたすら金をばらまいているからだ。現にロシア政府は、今年の国防支出を冷戦期以降で最高水準となるGDP比6.3%に引き上げると発表している(実際の戦費はもっと多いはずだ)。

しかし現状の高インフレが続けば、遠からずロシア政府の資金も尽きる。追加の経済制裁は、そこを見越して設計すべきだろう。


西側諸国による経済制裁はウクライナ侵攻の直後から続いているが、それでもロシア経済は高い成長率を維持してきた。国策による「戦争特需」のおかげだ。

ナビウリナをはじめ、財政・金融政策を仕切る官僚たちの舵取りもよかった。制裁の抜け穴を探り、あり余る石油・天然ガスの新たな市場(主として中国とインド)を開拓することにも成功した。その利益を、プーチンはひたすらこの戦争につぎ込んできた。

しかし、どうやらそれも限界らしい。インフレ率が高止まりする一方で経済成長は鈍化し、24年末に年率換算5%だった成長率は今年初めにほぼ0%にまで落ち込んだ。これを受けて一部の有識者は、物価上昇と景気低迷が同時に起こるスタグフレーションのリスクを警告している。

多くの企業が減益や返済不能な債務に苦しんでおり、倒産の連鎖を予測する声もある。国防費の増額に伴って軍事関連の産業に労働力が集中したことで、民間部門は深刻な人手不足に直面してもいる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:軽飛行機で中国軍艦のデータ収集、台湾企業

ワールド

トランプ氏、加・メキシコ首脳と貿易巡り会談 W杯抽

ワールド

プーチン氏と米特使の会談「真に友好的」=ロシア大統

ビジネス

ネットフリックス、ワーナー資産買収で合意 720億
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 3
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 5
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中