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無節操なトランプが見落とすロシアの「新たな脆弱性」...今こそ強力な対ロ経済制裁の好機

Now Is the Time for Sanctions

2025年5月21日(水)14時30分
クリスチャン・カリル(本誌元モスクワ支局長)
エストニア海軍が拿捕した「影の船団」の石油タンカー(4月11日)

エストニア海軍が拿捕した「影の船団」の石油タンカー(4月11日) POSTIMEESーSCANPIX BALTICSーREUTERS

<これまでの制裁は抜け穴だらけで、ロシア経済は好調を維持してきた。トランプに本気で圧力をかけるつもりがあるか分からないが、今こそ絶好のタイミングだ>

過大な期待は、やはり禁物なのだろう。

4月26日、先のローマ教皇フランシスコの葬儀に参列し、その場でウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と差しで話し合って少しは人の命の尊さに気付いたのか、ドナルド・トランプ米大統領は自身のSNSへの投稿で、停戦を口にしながらウクライナへの無差別爆撃をやめないロシアのウラジーミル・プーチン大統領を非難してこう書いた。


「彼には戦争をやめる気がないと考えざるを得ない。それなら付き合い方を変えてやる。『金融制裁』か、それとも『二次的制裁』か? とにかく人が死にすぎている!!!」

4月26日のトランプの投稿

ついにトランプもロシアの戦争を止める気になったのかと、淡い期待を抱いた向きもあるだろう。

しかし違った。5月11日には再びプーチンに肩入れしてウクライナに圧力をかける路線に立ち戻り、即時停戦ではなく当事者間の直接交渉をというロシア側の要求に「ウクライナは同意すべきだ、今すぐに」とSNSに書き込んでいた。

5月11日のトランプの投稿

独自の停戦案を取りまとめ、ロシアが応じなければ追加制裁を科す用意をし、当然アメリカも同調するものと信じていた欧州諸国は、これで足をすくわれた。停戦なしの直接交渉なら、ますます多くの人命が失われることになる。

そんな話にアメリカが乗るとしたら、再びプーチンに主導権を渡したも同然ではないか。

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