中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の火種」が...トランプが見落とす「危機の兆候」
THE LOOMING ALEUTIANS CRISIS
中国は北極で研究探査を行うことで、この地域との経済的結び付きを深めている。経済・軍事両面の影響力拡大は中国の国家安全保障戦略の基盤であり、習近平(シー・チンピン)国家主席のグローバルな野心を形作っている。
24年7月、アラスカのADIZ(防空識別圏)内を、中国とロシアの核兵器搭載可能な戦略爆撃機(中国のH6機2機とロシアのTU95機2機)が共同で飛行し、米軍とカナダ軍の戦闘機が緊急発進した。これは中国の北極圏進出が、科学や経済のためだけではないことを意味している。中国とロシアがアラスカ近海で共同パトロールを実施していることを、このときアメリカは初めて確認した。
同じ7月、米沿岸警備隊の巡視船はベーリング海で中国の艦船4隻を確認。アリューシャン列島のアムチトカ海峡から北に約200キロ、アトカ島の北東の地点だった。
アメリカの抑止力への挑戦
近年、中国は北極海で海軍のプレゼンスを強化しており、渤海からベーリング海まで戦略的に重要な海域を広範囲に航行している。これらの地政学的な要衝で中国が海軍力を強化することは、アメリカの海上軍事能力を混乱させる脅威になり得る。
20年にライアン・ティス米陸軍少佐は、「ベーリング海峡は3つの地域別戦闘軍(GCC)の境界に位置するため、海峡周辺で敵対勢力の活動が増えると、区域間の連携に課題が生じる」と述べている。