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ドイツ政治

内向きショルツから積極メルツへ...ドイツで一体何が変わる?

Merz Brings Germany Back

2025年5月13日(火)17時00分
ソフィア・ベッシュ(米カーネギー国際平和財団研究員)、リアナ・フィックス(米外交問題評議会研究員)

ボリス・ピストリウス国防相の留任は、メルツの力量を示す巧妙な人事だ。ピストリウスは国民の幅広い支持を集め、連立パートナーの社会民主党(SPD)には珍しいタカ派的存在。ドイツの再軍備を加速させる可能性があるだけでなく、再軍備に懐疑的なSPD内の勢力から新政権の政策を守る役割も期待できる。

ウクライナにも積極関与

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メルツ自身については、典型的な西ドイツ出身の保守派といえるだろう。根っからの対米協調派で、フランスに近く、EUを無条件に支持する一方で、戦略上の新しい現実への対応では実利を重視する。就任後すぐにパリのほか、ポーランドの首都ワルシャワを訪問したことは、外交をよりバランスの取れた方針に調整しようとする意図の表れだ。


メルツはウクライナを何度も訪問し、「タウルス」ミサイルを含む兵器の供与についてショルツより積極的な姿勢を示してきた。ウクライナの防衛はヨーロッパの防衛でもあるというのが、彼の信念だ。

対米政策では第2次トランプ政権がドイツにもたらすリスクは理解しながらも、ドイツ側から関係をこじらせるつもりはない。ヨーロッパを強く保つことのほうが、効果的な「保険」だと考えている。

国内政策では、財政赤字を抑えるための憲法上の制限である「債務ブレーキ」の改革に以前から取り組んできた。3月にはメルツの主導により、GDP比1%を超える国防費を債務ブレーキの対象外とする基本法の改正法案が議会で可決されたが、党内の緊縮財政派の反発を買っている。

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