最新記事
ウクライナ

欧州だけでも「十分足りる」...トランプがウクライナ支援から手を引いても「問題ナシ」と言い切れる理由

IS IT THE HOUR OF EUROPE AGAIN?

2025年1月21日(火)17時09分
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)

いずれの支援額も、実は大した金額ではない。名目GDPが27兆ドルに上るアメリカにとって、3年弱で910億ドルというのはかすり傷にもならない額だ。

ヨーロッパの経済規模はアメリカを大分下回るが、ノルウェーやイギリスも含めたウクライナへの支援総額も、ヨーロッパ全体のGDPの0.6%に満たない。つまり、金銭的な負担が重すぎるからウクライナ支援をやめるという議論は成り立たない。


軍事的にはともかく、政治的な風向きは今もウクライナに有利だ。この戦争が始まってから3年、ウクライナを「巨人ゴリアテに立ち向かうダビデ」になぞらえるような当初の熱狂は冷めたが、ヨーロッパのたいていの国では今も、国民の過半数がウクライナ支援の継続を支持している。

そもそもEUの首脳部には、ロシアの勝利は自分たちの存亡に関わる問題だという認識が共有されている。だからこそ欧州委員会を率いるフォンデアライエンは矢継ぎ早に経済制裁を繰り出し、ロシアの暴走を止めようとしてきた。

最も大事なのは、欧州では国政レベルの政治家のほとんどがウクライナ支援こそ国益にかなうと信じている点だ。EUの価値観や規範はロシア大統領プーチンのそれと相いれない。彼がウクライナ領を武力で奪取するのを座視すれば、もはやその野望を止められなくなる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

英住宅ローン融資、3月は4年ぶり大幅増 優遇税制の

ビジネス

LSEG、第1四半期収益は予想上回る 市場部門が好

ワールド

鉱物資源協定、ウクライナは米支援に国富削るとメドベ

ワールド

米、中国に関税交渉を打診 国営メディア報道
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中