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シリア情勢

「そもそも安定した時代がなかった」シリアの運命はダマスカスとアレッポを結ぶ「回廊の覇者」が決める【地政学】

FRAGMENTED BY GEOGRAPHY

2024年12月19日(木)15時45分
アラシュ・ライシネジャド(テヘラン大学助教〔国際関係学〕)

汎アラブ主義のくびき

民族も言語も宗教も多様なシリアでは、軍事行動も貿易も宗教的交流も、分裂と不安定化を促してきた。数千年の歴史を持つ土地で、異質な人々の間の緊張が続いてきたため、中央に独立した統一政権を樹立することは、著しく困難だった。

だからシリアは、たびたび大帝国(アッシリア、アケメネス朝ペルシャ、アラブ人、オスマン帝国など)の完全な支配下に置かれた。2つの大国(ローマ帝国とパルティア、ビザンチン帝国とササン朝ペルシャ、イルハン朝とマムルーク朝)が覇権を争う地域だった時期もある。


第2次大戦後にフランスの植民地から独立してからも、シリアは国家としての強力なアイデンティティーがないことや、脆弱な政府など多くの難題に直面した。

とりわけ、1948年の第1次中東戦争で敗北したことは、独立まもないシリアを不安定にさせ、汎アラブ主義の広がりを許した。そしてエジプトのガマル・アブデル・ナセル大統領の呼びかけに応じ、エジプトと共にアラブ連合共和国(UAR)を樹立、のちに北イエメンも合流した。

やがてUARが崩壊し、67年の第3次中東戦争で壊滅的な敗北を喫してからも、シリアで汎アラブ主義が弱まることはなかった。

70年にハフェズ・アサド(バシャル・アサドの父親)がクーデターで全権を掌握し、バース党の支配が始まると、ようやく政治的安定らしきものが生まれたが、それは強権政治によって実現したにすぎなかった。

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