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大詰め自民党総裁選、声の専門家が読み解く「最有力候補」の本音と実力

The Secret of Voice

2024年9月25日(水)06時30分
山﨑広子(音楽・音声ジャーナリスト、「声・脳・教育研究所」代表)

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石破氏は声に緊張や動揺が出ることがない KAZUKI OISHI/SIPA USA-JPN-REUTERS

石破茂(元幹事長)

はっきり言って美声である。体格のとおり声帯は長めで厚く、低い音域が出るにもかかわらず、圧の強いマッチョな声にはあえてしていない。これは声帯閉鎖を意識的に緩め、咽頭腔でも柔らかい共鳴を生じさせているためだ。

原音が声になる際にさまざまな倍音が生じて、それが一人一人の声の個性をつくっているのだが、石破氏の声も高めの倍音が程よく出ていることで、迫力と優しさを備えている。迫力を感じるのは、いつでも圧の強い声が出せる素質が見え隠れするからだ。そして常に喉頭位置が安定しているために、声に緊張や動揺が出ることがない。


街頭演説などでは通常、緊張や興奮によって喉仏の上にある舌骨が上がり、舌骨と一体となって動く喉頭もまた上がってしまう人がほとんどである。その結果、不必要に高く張り上げた声や絞り出すような苦しい声になってしまう。しかし、以前に渋谷区の騒がしい街頭での石破氏の演説を聞いたことがあるが、沈黙の後の第一声は驚くほど柔らかく低い声だった。これは並の人にできる技ではない。

呼吸と声だけでなく、精神のコントロールも非常に上手な人である。言いたいことがどれほどあっても、ゆったりとした話し方はあまり崩れることがない。それは柔らかな声との相乗効果でかんで含めるような説得力を持つ。

が、このところ少し鼻に空気が抜けにくかったり滑舌が悪くなったりしていて、気力が少し萎えているように感じられる。唯一惜しいところだ。

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