最新記事
考古学

ストーンヘンジの祭壇石、スコットランド北東部からの長距離輸送説が浮上

Stonehenge: Mysterious Origins of 'Unique' Altar Stone Finally Revealed

2024年8月16日(金)11時00分
アリストス・ジョージャウ
 ストーンヘンジの謎を解く...祭壇石の意外な産地が明らかに K. Mitch Hodge-Unsplash

ストーンヘンジの謎を解く...祭壇石の意外な産地が明らかに K. Mitch Hodge-Unsplash

<ストーンヘンジの中心に位置する巨石「祭壇石」が、600キロ以上離れたスコットランドから運ばれた可能性が浮上した>

イングランド南西部にある先史時代の巨石群ストーンヘンジについて、中央の「特異な」岩の産地をめぐる謎を解き明かしたという研究結果が発表された。

科学誌ネイチャーに発表された論文によると、重さ6トンの「祭壇石」の産地は、ストーンヘンジから見てグレートブリテン島の反対側に位置する現在のスコットランド北東部だったと思われる。


 

1世紀以上の間、祭壇石の産地はグレートブリテン島の南西部に位置するウェールズだと思われていた。しかしここ数年の研究で、この説に対する疑問が浮上。祭壇石の真の産地をめぐる疑問は未解決のままになっていた――。今回の研究が発表されるまでは。

ストーンヘンジはウィルトシャー州にある新石器時代の石碑で、巨大な石が環状に配置されている。建設が始まったのはおよそ5000年前とされ、その後2000年の間に何度か変更されたり構造に手が加えられたりしたと考えらえている。

「祭壇石はその大きさや重さ、石の種類、巨石群の中の配置などにおいて特異な存在でありながら、ほとんど何も分かっていなかった。この場所にいつ到来したのか、立てられたことがあるのか、それともずっと横たわったままだったのかも分からず、結果として目的もほとんど分かっていない」。ネイチャーに論文を発表したアベリストウィス大学地理地球科学部のリチャード・ベビンズは本誌にそう語った。

スコットランド北東部産の岩石か

祭壇石がいつ到来したのかは不明だが、紀元前2620年から2480年ごろの第2次建設期に、ストーンヘンジの中心に置かれた可能性がある。

ストーンヘンジに関するこれまでの研究で、巨石群の建造には主に、いわゆるサルセン石とブルーストーンという2種類の岩石が使われたことが分かっている。サルセン石のほとんどは、24キロほど離れた現在のウィルトシャー州マールボロに近いウェストウッズ産と思われる。一方、小さい方のブルーストーンの産地は、ほとんどがウェールズ西部だったことが分かっている。

祭壇石は砂岩で、従来はブルーストーンと同じ種類に分類されていた。

「祭壇石の産地がウェールズ西部だったという説は1世紀以上前にさかのぼる。1923年に地質学者のH・H・トーマスが、ブルーストーンは全て国内の限られた地域から来たと信じてウェールズ西部説を提唱した」とベビンズは説明する。

最新の研究では祭壇石の断片の標本に含まれる鉱物の年代と成分を分析した。祭壇石の大きさは長さが約4.9メートル、幅約0.9メートル、厚さ約0.5メートル。

分析の結果、鉱物の年代や成分は、スコットランド北東部産の岩石と統計的に区別がつかないことが分かった。ウェールズの岩石とは明らかに異なっていた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

FRB年内利下げ幅予想は1%、5月据え置きは変わら

ワールド

EU、米国の対ロシア政策転換に備え「プランB」を準

ワールド

サウジ、原油生産の政策転換示唆 「原油安の長期化に

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米GDPは3年ぶりのマイナ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 2
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・ロマエとは「別の役割」が...専門家が驚きの発見
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 6
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 7
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 8
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    中居正広事件は「ポジティブ」な空気が生んだ...誰も…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 7
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 8
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 9
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは…
  • 10
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中