最新記事
カリブ海

【米中覇権争い】アメリカの「戦略的要衝」カリブ海でも高まる中国の影響力、「キューバ危機」の再来も!?

CREEPING CLOSER

2024年6月14日(金)13時26分
ディディ・キルステン・タトロウ(国際問題担当)

newsweekjp_20240613022911.jpg

新経済特区で建設中のスタジアムで働く中国人建設労働者たち GEMMA HAZELWOODーBLOOMBERG/GETTY IMAGES

米政府の現職および元関係者によれば、この特区に関わる別の中国人はアンティグア・バーブーダとアラブ首長国連邦(UAE)の間を定期的に往復し、UAEの港湾プロジェクトにも携わっていた。なおアメリカは21年に、同国のハリファ港に中国の軍事施設が建設されるのではないかと疑い、異議を申し立てた。

アンティグアにおける中国の存在感は、ブラウン率いるアンティグア・バーブーダ労働党が与党となってから急速に拡大した。

またCCECCは20年に、アンティグア島に地域本社を開設したが、その場所は中国資本で建てられた国立競技場のすぐ隣。VCバード国際空港の再開発も中国企業が手がけた。

西インド諸島大学のアンティグア分校には孔子学院がある。またニコラスによれば、中国政府の奨学金で約88人のアンティグア・バーブーダ人学生が中国の大学で学んでいる。

チャールズ・フェルナンデス観光・航空相は本誌に、体育会系の奨学金しか提供しないアメリカの大学と違って中国は気前がいいと語った。「アメリカ人はアンティグアに何も投資していない」とフェルナンデスは言い、15年にレーダー追跡基地を閉鎖したときも機材の「全てを持ち去った」と語った。

中国の自動車大手・比亜迪汽車(BYD)は4月に現地ディーラーを立ち上げており、ブラウンによれば、近くタクシーとバス用のEVが中国本土から到着する。

中国大使館はまるで要塞

アンティグアの中国大使館は、既にその権力の象徴となっている。アンティグア・バーブーダ政府が中国にわずか1東カリブドル(米ドル換算で40セント)で売却した敷地は2万平方メートルと広大だ。

30台以上の監視カメラと4層の電線に覆われた高いコンクリートの壁に囲まれ、2カ所の入り口は金属製の柵に守られている。議会の議事堂にも車で自由に乗り付けられるこの国で、このレベルの高度なセキュリティー対策は異様だ。

匿名で取材に応じた2人の現地駐在外交官によれば、この大使館は諜報活動や盗聴の拠点として使われている疑いがある。大使館で働いている職員数についての公表された情報は、施設の規模に比べて少なすぎる。そこに「秘密のスタッフがいて、その人たちの情報は見えないように隠されていると考えるのが妥当」だという声も聞いた。

米南方軍司令部は現時点で「情報収集拠点」としての設備、例えば衛星の「基準局」のようなものは確認していないが、中国側の不審な建造物についてはカリブ海全域で精査を進めているという。

「中国がカリブ海で行う諜報活動は、ほぼ間違いなく、メキシコ湾とカリブ海におけるアメリカと周辺地域の商業・軍事的な動きを標的にしたものと認識している」と、報道官は述べた。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:日米為替声明、「高市トレード」で思惑 円

ワールド

タイ次期財務相、通貨高抑制で中銀と協力 資本の動き

ビジネス

三菱自、30年度に日本販売1.5倍増へ 国内市場の

ワールド

石油需要、アジアで伸び続く=ロシア石油大手トップ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中