最新記事
認知症

バイアグラが認知症に効きそう、という研究結果

Viagra May Help Prevent Dementia: 'Findings Are Very Encouraging'

2024年6月11日(火)17時13分
パンドラ・デワン
バイアグラ

これがまさに夢の薬? Christophe Gateau/dpa

<陰茎への血流を増やすバイアグラの効果が、脳の血流も改善する可能性があるという>

英オックスフォード大学の研究チームが、認知症の治療薬となるかもしれない意外な薬剤を発見した。バイアグラだ。

【動画】「認知症」説が再燃するきっかけになったプーチンの仕草と発言...「会談中の異変」映像

米疾病予防管理センター(CDC)が集計した2014年のデータでは、65歳以上のアメリカ人のうち認知症患者の数は500万人以上に達している。認知症には複数の種類があり、それらに共通する特徴的な症状としては、記憶、思考、意思決定の能力低下が挙げられる。

認知症症例の約60〜80%を占めるとされるのはアルツハイマー型認知症で、最も一般的な認知症の種類となっている。だが、認知症の症例の約10%は、脳卒中や、脳内血流の異常に関連したものだ。このタイプの認知症は「血管型認知症」と呼ばれ、リスク要因としては、糖尿病と高血圧、高コレステロール値の3つが知られている。バイアグラには、この種類の認知症を予防する効果があるかもしれないのだ。

バイアグラは、シルデナフィルという化合物の商品名であり、陰茎への血流を増す効能により、勃起不全の治療薬として使われている。しかし今回の研究によると、この薬が脳の血流も改善する可能性があるという。

研究の主著者であるオックスフォード大学のウォルフソン脳卒中・認知症予防センターのアラステア・ウェッブ准教授は、声明で次のように述べている。「今回の研究は、この疾患(認知症)を持つ者の脳内血管にシルデナフィルが入ると血流が改善されることと、これらの血管がどのように反応するかを示す、最初の臨床試験だ」

広く入手可能な認知症薬の可能性

「これら2つの重要な要素(血流が改善されることと、血管の反応性)は、血管型認知症の最も一般的な原因である、脳内小血管への慢性的な損傷と関連している。」

学術誌「Circulation Research」に掲載された論文で、ウェッブ率いる研究チームは、75名の認知症患者からなる集団において、シルデナフィル(バイアグラ)が、脳の大血管と小血管の両方で血流を増大させることを確認した。

「このことは、忍容性(副作用をどれだけ耐えられるかの程度)が高く、広く入手可能なこの薬剤に、認知症の予防効果が認められる可能性を示している。この点は、さらに大規模な臨床試験で検証が必要だ」と、ウェッブは述べた。

研究チームでは今回の研究結果を、より大規模な臨床試験で再現し、シルデナフィルが持つ可能性を、より大きな規模で検証したいと考えている。

オックスフォード大学の臨床神経学教授で、ウォルフソン脳卒中・認知症予防センターの創設所長を務めるピーター・ロスウェルは、声明でこう述べた。「ウェッブ准教授の研究結果は、非常に期待が持てるものであり、既存の薬剤を使って血管型認知症を予防できる可能性に光を当てている。この薬剤は、この型の認知症を引き起こす、脳内小血管における血流減少を標的としている」
(翻訳:ガリレオ)


20240730issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年7月30日号(7月23日発売)は「トランプ暗殺未遂」特集。前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中