最新記事
ペット

「サルミアッキ」猫の秘密...遺伝子変異が生んだ新たな毛柄

New Cat Pattern Is 'Salty Licorice' Mutation

2024年6月3日(月)11時20分
ロビン・ホワイト
(写真はイメージです) Kimi Albertson-Unsplash

(写真はイメージです) Kimi Albertson-Unsplash

<フィンランドで見られる珍しい猫の柄、その遺伝子の秘密が解明>

フィンランドには「風変わりな毛柄」をもつ猫たちがいるが、こうした柄を生む遺伝子変異を科学者たちが突き止めた。

フィンランドでは、この変異をもつ野良猫が2007年に現れ始めた。こうした猫は基本的には「タキシード」柄に見えるが、毛の根元は黒く、先端に行くにしたがって白くなる。

この独特で人目を引く毛皮のおかげで、そうした猫は多くの人に引き取られ、家庭で飼われるペットになった。

名前の由来はフィンランドの菓子

この研究を実施した科学者チームは論文で、この毛柄を「サルミアッキ」と名づけたと書いている。これは、フィンランドで食べられている「塩味のリコリス菓子」の一種にちなんだ命名だ。白い毛のサルミアッキ・パターンは、ベースが黒い猫の場合に目につきやすいが、ブラウンタビー(キジトラ)、サビ猫(黒と赤のモザイク状)、ブルー(灰色)系の猫など、ほかの毛色の猫にも現れる。

【画像】新種の毛柄をもつ「サルミアッキ」猫

そうしたサルミアッキ柄の猫の遺伝子について理解を深めるべく、研究チームはDNA解析に着手した。その結果が「アニマル・ジェネティクス」誌に掲載されている。

研究チームはまず、飼い主の許可を得たうえで、ヘルシンキ大学のバイオバンクを通じて、5匹のサルミアッキ猫から血液サンプルを採取した。

そのうち4匹の猫について、毛色に影響することが知られている遺伝子を調べた。テストの結果、そうした猫は、全体に色がつく典型的な遺伝子をもつが、白い毛の遺伝子はもたないことがわかった。試験対象となった猫の黒や青の毛色は、特定の遺伝形質によるものだった。

独特な毛色を生む「特定の欠失」

研究チームは、そのうちの2匹の猫について、全ゲノム解析を実施した。これはつまり、すべてのDNAを検証し、独特な変異があるかどうかを調べることを意味する。この検証により、KITと呼ばれる遺伝子の近くに、特定の欠失(DNAの一部が欠けていること)が見つかった。これが、サルミアッキの独特な毛色を生んでいる可能性がある。

次に、フィンランドの猫180匹の遺伝子を調べた。対象となった猫のなかには、サルミアッキ柄のものもいれば、そうでないものもいた。研究チームは、サルミアッキ柄に関連して発見した遺伝子変異を「wsal」と名づけ、特殊なツールを用いて、猫がその特定の変異をもつかどうかを調べた。その結果、この変異の存在がサルミアッキ柄と完璧に一致することがわかった。

論文によれば、全ゲノム解析を実施しなかったさらに3匹のサルミアッキ猫も、この変異をもっていたという。

サルミアッキ柄ではない猫のうち、3匹は、当該変異1コピーをもっていたがサルミアッキ柄を示さず、残りは当該変異をもっていなかった。この結果は、サルミアッキ柄が発現するためにはwsal変異2コピーが必要であることを示唆している。

同研究では、ルーマニアと英国に住む、また別の変わった柄をもつ猫には、この変異が存在しないこともわかった。今回の研究により、この独特な毛柄ができる理由が明らかになった、と研究チームは結論づけている。

(翻訳:ガリレオ)

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

タイ首相、議会解散表明 45─60日以内に総選挙

ワールド

タイ首相、議会解散表明 45─60日以内に総選挙

ワールド

トランプ氏、州レベルのAI法抑制へ大統領令

ビジネス

午前の日経平均は反発、TOPIX高値更新 景気敏感
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれなかった「ビートルズ」のメンバーは?
  • 3
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキャリアアップの道
  • 4
    【揺らぐ中国、攻めの高市】柯隆氏「台湾騒動は高市…
  • 5
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 6
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 7
    受け入れ難い和平案、迫られる軍備拡張──ウクライナ…
  • 8
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 9
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎…
  • 10
    ピットブルが乳児を襲う現場を警官が目撃...犠牲にな…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中