最新記事
日本社会

人口流出を食い止めるカギは、地元大学の魅力を高めること

2024年4月11日(木)16時00分
舞田敏彦(教育社会学者)
米大学キャンパス

地元の若者に高度な教育を提供し、地域の発展に貢献することは大学の中心的な機能 Ryan C. Hermens/Lexington Herald-Leader/TNS/ABACA/REUTERS

<地元出身の学生に支援金を支給したり、卒業後に県内で就職した学生の奨学金返済を支援したりしている自治体も>

地方から都市への人口流出は、大学等への進学時に起きる。これを食い止める対策は、地元における大学教育機会を充実させ、高校卒業後も居残ってもらうことだ。他県から若者を呼び寄せることにもなるが、卒業後に県外に出て行ってしまう可能性が高いため、できれば地元出身者に多く入ってきてほしい。これが関係者の本音だ。

大学の機能は大きく①研究、②教育、③社会サービスに分かれるが、時代とともに③の重要性が高まっている。地元の若者に高度な教育を提供し、地域の発展に貢献することは、その中心に位置する。

これがどれほど実現されているかを見る指標の1つに、大学入学者の自県出身者割合がある。県内の大学に入った者のうち、地元出身者が何%いるかだ。筆者の郷里の鹿児島県を例にすると、2023年春に県内の大学に入学したのは3644人。うち県内の高校出身者は2178人。よって自県出身者割合は59.8%となる。およそ6割だ。

同じ数値を47都道府県別に算出し、高い順に並べると<表1>のようになる。

newsweekjp_20240411040913.png


 

自県出身者の割合が半分を超えるのは15県で、沖縄や北海道では7割を超える。地理的な要因が大きいだろうが、学生の主体は地元出身者といっていい。その一方で、値が3割にも満たない県もある。滋賀や鳥取では、学生の8割が他県出身者だ。

教育内容がユニークである、学費が安い国公立大学の比重が高い、というような事情により、他県からこぞって学生が来るのかもしれない。だが国立大学はともかく、住民の税金で運営される公立大学の場合、学生の多くが他県出身者で占められるのはいかがなものか、という声もある。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国で値下げ競争激化、デフレ長期化懸念 

ワールド

米政権、農場やホテルでの不法移民摘発一時停止を指示

ワールド

焦点:イスラエルのイラン攻撃、真の目標は「体制転換

ワールド

イランとイスラエル、再び相互に攻撃 テヘラン空港に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 3
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されずに「信頼できない人」を見抜く方法
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 9
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 10
    先進国なのに「出生率2.84」の衝撃...イスラエルだけ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 8
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中