最新記事
ウクライナ情勢

仏大統領のウクライナ派兵巡る発言、NATO諸国に大きな波紋

2024年2月29日(木)10時46分

フランスのマクロン大統領は26日にパリで開催したウクライナ支援の国際会合で、欧米諸国の地上部隊をウクライナに派遣する可能性を排除しない考えを表明した。パリで代表撮影(2024年 ロイター)

フランスのマクロン大統領は26日にパリで開催したウクライナ支援の国際会合で、欧米諸国の地上部隊をウクライナに派遣する可能性を排除しない考えを表明した。

その意図はロシアに対する「戦略的な曖昧さ」を提起することにあったが、あまりにも曖昧だったため、北大西洋条約機構(NATO)諸国に混乱といら立ちを巻き起こしている。

 

この発言は、タブー(禁忌)をあえて犯すことを好み、伝統的な思考に挑発的な姿勢を取りたがる「外交の破壊者」というマクロン氏の評判にふさわしいものだ。

実際、ウクライナへの派兵を否定しないことで、そうした行動はNATOとロシアが全面対決する世界戦争に発展するリスクがある、という見方に異議を唱えようとしている。

これをきっかけに、ウクライナとロシアの戦争に対する西側の直接的な関与拡大の道が開かれ、結局は先見性のある発言だったということになるかもしれない。

一方で、ウクライナ支援で西側の結束を強化したいというマクロン氏の最大の狙いが台無しになる恐れもある。

米政府はウクライナ派兵はしないと明言。ドイツ、英国、イタリア、スペイン、ポーランド、チェコもすぐさま、マクロン氏の考えに距離を置く姿勢を示した。

複数のフランス政府高官は、マクロン氏が議論に刺激を与えたかっただけで、派遣構想に含まれるのは地雷除去や国境警備、ウクライナ軍の訓練といった非戦闘部隊だと補足説明している。

フランスのセジュルネ外相は「われわれはウクライナ支援で新たな行動を検討し、非常に個別具体的なニーズに対応しなければならない。私は特にウクライナ領土での地雷除去、サイバー攻撃防止、武器保管場所の警備を考えている」と語った。

<独仏関係にもあつれき>

マクロン氏の発言は、欧州の政治的協調の要となるフランスとドイツとの関係という面でも、あつれきを増大させる恐れを招くことになった。

同氏は一部の国が2年前、ウクライナに「寝袋とヘルメット」しか送りたがらなかったと指摘し、ドイツに対して当初の消極姿勢を捨ててウクライナに攻撃兵器を供与するよう促している様子だった。

これに対して複数のドイツ政府高官は最近数週間、非公式の場でフランスこそウクライナに十分な支援を提供していないと非難している。

ある西側諸国の当局者は、マクロン氏がわざわざ状況をかき乱したり、あえて困惑をもたらしたりする行動を取っていると嘆く。欧州連合(EU)外交官の一人も、マクロン氏の発言で同盟諸国に不協和音が生じていると不快感をにじませた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収交渉に参加か アポロと協

ビジネス

ネットフリックス、1─3月加入者が大幅増 売上高見

ワールド

ザポロジエ原発にまた無人機攻撃、ロはウクライナ関与

ビジネス

欧州は生産性向上、中国は消費拡大が成長の課題=IM
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    ヨルダン王女、イランの無人機5機を撃墜して人類への…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中