最新記事
ウクライナ

NATO軍とロシア軍がウクライナで直接衝突する可能性が初めて言及される

Russia Warns NATO It's Approaching a Red Line

2024年2月28日(水)15時04分
ジョン・ジャクソン

NATOに加盟したばかりのスウェーデンの陸軍部隊(ストックホルム近郊の軍事施設、2月27日) REUTERS/ Tom Little

<NATO軍部隊のウクライナ派兵の可能性を示したフランスのマクロン大統領の発言に対し、ロシアは激しく反発。その場合は直接対決になると警告した>

ロシア政府は2月27日、NATOがウクライナに地上部隊を派遣するならば、NATOとロシアの直接衝突が避けられなくなると警告した。

ロシア側が警告を発するきっかけとなったのは、エマニュエル・マクロン仏大統領の発言で、西側の地上部隊をウクライナに派遣して防衛を強化する可能性を示唆するものだった

マクロンは26日、パリで、欧州諸国がウクライナに直接派兵する可能性について、「いかなることも排除されるべきではない」と語った。「ロシアがこの戦争に勝利しないように、われわれはできることはすべて行う」。

ウクライナを支援する西側諸国は、この戦争に自国の軍隊を投入していない。それは、紛争をエスカレートさせる挑発行為であり、ロシア側が明確に表明している「レッドライン(一線)を越える」行為を意味するからだ。ロシアのドミトリー・ペスコフ報道官は記者会見で、西側の軍隊が戦争に参加するとなれば、直接対決は「避けられない」と述べた。

ロシアの国営タス通信によれば、西側諸国がウクライナに軍隊を派遣してNATOとロシアが直接衝突する可能性について質問されたペスコフは「その場合、衝突は可能性ではなく、必然となるだろう。われわれはそう評価する」と答えた。

ペスコフは、NATO諸国もそのような行動の結果を「評価すべきだ」と付け加えた。ウクライナを支援する西側諸国は、「これが自国の利益、そして最も重要なことだが、自国民の利益に合致するかどうかを自問すべきだ」

NATOトップも派兵を否定

マクロンの「やる気」にもかかわらず、イギリス、ドイツ、イタリア、ポーランド、スペイン、ハンガリーなど、NATO諸国の首脳はこぞって、自国軍のウクライナ派兵を否定した。

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も、NATO軍のウクライナ派兵の可能性を否定した。

「NATOの同盟国はウクライナに前例のない支援を提供している。それは(クリミア併合の)2014年以来のことで、2年前の本格侵攻の後はさらに強化した。だが、ウクライナにNATO軍部隊を駐留させる計画はない」とストルテンベルグはAP通信に語った。

パリでは26日に、ウクライナ支援のための国際会合が開かれ、欧米約30カ国の首脳や代表が参加した。フランス政府は会合後の公式声明で、ウクライナを支援する国々が、サイバー防衛、ウクライナでの兵器生産の増強、「ウクライナでのロシアの攻勢によって脅かされている」モルドバなどの周辺諸国の防衛、ロシアと同盟関係にあるベラルーシとの国境地帯の安全保障の支援、地雷の除去に重点を置くことで合意したと述べた。

ウクライナは外国軍の派兵を歓迎すると見られている。ウクライナ軍よりはるかに大きいロシア軍と戦うための新兵がなかなか集まらずに苦労しているからだ。戦争が3年目に突入するなか、武器や資金面で最大の支援国であるアメリカからの援助が議会の承認が得られずに行き詰っていることにも、危機感を抱いている。「ロシアを勝たせないためには」派兵も辞さないと言ったマクロンに、ヨーロッパが反対できなくなる日も遠くないかもしれない。


ニューズウィーク日本版 AIの6原則
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月22日号(7月15日発売)は「AIの6原則」特集。加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」/仕事・学習で最適化する6つのルールとは


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:ドローン大量投入に活路、ロシアの攻勢に耐

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダックほぼ変わらず、トラ

ワールド

トランプ氏、ニューズ・コープやWSJ記者らを提訴 

ビジネス

IMF、世界経済見通し下振れリスク優勢 貿易摩擦が
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは「ゆったり系」がトレンドに
  • 3
    「想像を絶する」現場から救出された164匹のシュナウザーたち
  • 4
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が…
  • 5
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 6
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 7
    「二次制裁」措置により「ロシアと取引継続なら大打…
  • 8
    「どの面下げて...?」ディズニーランドで遊ぶバンス…
  • 9
    「異常な出生率...」先進国なのになぜ? イスラエル…
  • 10
    アフリカ出身のフランス人歌手「アヤ・ナカムラ」が…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長…
  • 5
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    アメリカで「地熱発電革命」が起きている...来年夏に…
  • 8
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 9
    ネグレクトされ再び施設へ戻された14歳のチワワ、最…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中